研究課題
細胞外マトリックス(ECM:extracellular matrix)は癌の浸潤、転移に抑制的に働く一方で、その一部には促進的に働く機能的分子が存在することが明らかになりつつある。昨年度までの研究課題である「肝細胞癌における直鎖状ポリユビキチン鎖の役割の解明」での検討において、直鎖状ポリユビキチン鎖を形成する分子群の構成成分であるSharpinの高発現が細胞浸潤を誘導することを見出し、その表現型の責任分子としてECMプロテオグリカンの一つVersicanを同定した。Versicanは様々な癌腫において発現が亢進しており、転移や腫瘍進展への関与が示唆されている。本研究ではVersicanの肝癌進展における役割を明らかにし、本分子を標的とした肝細胞癌の新規治療法の可能性を検討する。初年度は肝癌におけるVersican発現亢進メカニズムの検討を行った。既報ではWntシグナル経路の活性化がVersicanの転写を亢進させており、我々の検討でもWntシグナル活性下ではVersicanの転写が亢進し、それはSharpinの強制発現により協調的に増強された。さらにSharpinはまたWntシグナルの構成因子の一つbeta-cateninと結合しVersicanの転写調節に寄与している可能性が示唆された。 以上よりVersican はWntシグナル経路の活性化により発現が増強し、さらにSharpinはNF-κB非依存的にWntシグナルを修飾することによりVersicanの発現を亢進させるという、新しい機序を介して肝癌の浸潤を促進しているものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
初年度は肝癌におけるVersican発現亢進メカニズムの検討を行い、VersicanはWntシグナル経路により調節されていることが明らかとなった。計画は順調に進んでいると思われる。
今後は今回の結果を踏まえて、Versicanの発現調節による新規治療法やバイオマーカーとしての可能性を検討したい。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
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