研究課題/領域番号 |
16K09342
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
建石 良介 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (50444089)
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研究分担者 |
田中 康雄 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (40422290)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞外マトリックス / 浸潤 / 転移 / Versican / 細胞外マトリックスプロテオグリカン / Sharpin |
研究実績の概要 |
細胞外マトリックス(ECM:extracellular matrix)は癌の浸潤、転移に抑制的に働く一方で、その一部には促進的に働く機能的分子が存在することが明らかになりつつある。本研究ではECMプロテオグリカンの一つVersicanの肝癌進展における役割を明らかにし、本分子を標的とした肝細胞癌の新規治療法の可能性を検討した。昨年度は肝癌におけるVersican発現亢進メカニズムの検討を行い、Wntシグナル活性下ではVersicanの転写が亢進し、それはSharpinという直鎖状ポリユビキチン鎖を形成する分子群の構成成分の強制発現により協調的に増強されることが明らかになった。本年度は、さらに①クロマチン免疫沈降(ChIP; Chromatin immunoprecipitation)による、SharpinのVersicanのプロモーター領域への誘導の検討、②細胞内でのWntシグナル活性下でのSharpinの局在を検討した。その結果、①クロマチン免疫沈降では、Wntシグナル活性下でbeta-cateninがVersicanのプロモーター領域に誘導されたが、今回の検討では明らかなSharpinの誘導は認められなかった。②Sharpinは細胞質・核内両方に存在したが、Wntシグナル活性下では細胞質に存在するSharpinの一部が核内に移行し、beta-cateninと共存した。以上よりSharpinはWntシグナル活性化で細胞質から核内に移動しbeta-cateninと共にcoactivatorとしてVersicanの発現を亢進させている可能性が示唆された。肝癌においてWntシグナルが活性化した条件下では、Sharpinが治療の標的となり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は肝癌で高頻度に活性化されているWntシグナル経路によるVersicanの発現機序の詳細を明らかとした。計画は順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も引き続きVersicanの発現調節による新規治療法やバイオマーカーとしての可能性を追求する。
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