研究課題/領域番号 |
16K09347
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松田 康伸 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40334669)
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研究分担者 |
山際 訓 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (10419327)
永橋 昌幸 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30743918)
小林 隆 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (40464010)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エクソソーム / 肝がん / シスプラチン |
研究実績の概要 |
【研究の背景・目的】 近年、細胞-細胞間の情報伝達には液性因子だけでなく、不溶性粒子のエクソソーム(20-100 nm)が関与していることが明らかにされている。エクソソームは様々なタンパクやmicro RNAを内包してるため、重要な細胞間コミュニケーションツールとしても注目されている。本研究の目的は、肝がんのエクソソーム分泌機構・臨床的意義の解明を行い、奏功性の高いがん治療法開発の基盤を構築することである。 【これまでの研究成果】 HepG2ヒト肝がん株にシスプラチンや5-FUなどの抗がん剤を添加して、20時間後に抗がん剤を除去した後、引き続き培養を続けて培地を回収した。この培地からエクソソームを単離したところ、肝がんのエクソソームが3.2-4.5倍に分泌が増加した。さらに単離したエクソソームを別の肝がん細胞に添加した結果、様々な細胞生存促成因子の活性化(リン酸化(活性型)のストレスキナーゼERK, Aktの増加)が認められ、シスプラチンや5-FUなどの抗がん剤に対する薬剤耐性を獲得した。単離されたエクソソーム内部の60種リン酸化タンパクをWestern blot解析した結果、リン酸化型のセリン・スレオニンキナーゼmTORのみならず、mTOR下流シグナル因子p70S6KやPRAS40のリン酸化レベルが数倍増加していた。したがって、抗がん剤処理肝がん細胞のエクソソーム内部では、活性化されたmTOR経路因子が存在しているものと思われた。肝がん(HepG2, PLC/PRF/5)にシグナル阻害剤(炎症 = IL-1/IL-6/COX2阻害剤; 酸化ストレス = 抗酸化剤; 細胞死 = TNF-alpha;/カスパーゼ阻害剤; DNA修復 = ATM/ATR阻害剤)存在下でシスプラチン・5-FUを添加して、エクソソーム分泌量をWestern blottingで解析した結果では、明らかな変化がないため、今後はさらに多くの阻害剤で検討する必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① エクソソーム単離方法の改善: 研究開始当初は、超遠心法を用いて、がん細胞のエクソソームを単離していたが、時間がかかり、また純度に不安定な問題点があった。しかしながら、最近市販されたエクソソーム抽出キットを用いるようになってからは、順調に、しかも超遠心法と遜色ないエクソソームの単離が可能になった。 ② エクソソーム内包成分の解析: エクソソームは微量なので、高感度Western blot解析法を用いて、内部のリン酸化タンパクの解析を行うことにより、解析が容易になった。現時点では、主にエクソソーム内のmTOR経路に着目して順調に解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
① 肝がんエクソソーム構成成分の解析: なぜ、抗がん剤で処理された肝がんのエクソソームの構成成分が変化するのかを探索する目的で、各種シグナル阻害剤存在下で肝がん細胞に抗がん剤を添加し、単離されたエクソソームの内部をwestern blot解析することによって、エクソソーム分泌メカニズムを探りたい。特にmTOR経路に着目して、同シグナル因子の変化を詳細に検討する予定である。 ② 肝がんエクソソーム分泌量の変化の解析: 本研究の過程で、抗がん剤を添加すると、肝がん細胞は10-30倍量のエクソソームを分泌することが明らかになったため、今後は抗がん剤の濃度毎にエクソソーム分泌量を調べ、そのメカニズムを探る目的である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究初年度では、エクソソーム分泌機構を調べるうえで重要な、各種シグナル阻害剤添加後のエクソソーム単離の基本操作が終了した。次年度以降からは、数多くの阻害剤を使用して研究する必要があるため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
エクソソーム分泌機構の調節シグナルの探索スクリーニングを網羅的に行うため、多種の市販阻害剤を購入する予定である。
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