研究課題
●抗ウイルス治療によって大きく進歩したHBV、HCV治療において残された最大の問題は、抗ウイルス治療後に発生する肝癌の克服である。本検討では、研究代表者らが培ってきた肝炎ウイルスおよび宿主遺伝子における次世代シークエンス技術を用い、肝発癌のリスク、治療標的分子、予後を明らかとするものである。●治療前におけるHBVウイルスゲノム変異解析:核酸アナログあるいはインターフェロン治療前におけるHBVゲノムの変異とそのquasispeciesにおける情報をdeep sequenceを用いた血液あるいは肝組織検体の解析により明らかとする。H28年度はHBVウイルスのゲノムについては、HBVpreS領域を中心として次世代シークエンスを行い、HBVpreSにおいて病態進展に関連するpreS132-141領域を見出した。さらに同領域の欠失頻度と血清HBcrAg定量値、HBsAg定量値の間には有意な相関関連があり、3者を組み合わせることで肝病態を正確に診断し得る可能性を明らかとした。●治療前におけるHCVウイルスゲノム変異解析:HBVと同様にインターフェロンあるいはDAA製剤治療前におけるHCVゲノムの変異おそのquasispeciesにおける情報をdeep sequence、あるいはdirect sequenceを用いた解析により明らかとする。H28年度はDAA製剤に対して耐性変異を持つHCVが、IL28Bメジャーアレル・肝癌の有無と有することを明らかとした。●肝癌組織における発癌と関連するゲノム変化の解析:肝癌症例の肝組織に着目して癌関連遺伝子の解析を次世代シークエンサにより行う。H28年度は、肝発癌に中心的な役割を持つことが想定されているhTERT、p53、βカテニンの遺伝子変異にフォーカスして、乏血性肝癌を含む初期肝癌組織に注目し、癌部・非癌部での遺伝子変化について明らかとした。
2: おおむね順調に進展している
HBVおよびHCV等のウイルスゲノムと宿主遺伝子ゲノム、双方を併せて統合的に解析することにより、肝発癌メカニズムを明らかとし、肝発癌診断のバイオマーカーを開発することが本研究の趣旨である。H28年度はウイルスゲノム・宿主ゲノム双方において次世代シークエンスを行い、結果を得ている。
H29年度以降は、H28年度の研究成果をさらに発展し、ウイルスゲノムについてより網羅的な変異解析により、肝発癌におけるウイルスゲノムの役割をさらに明らかにすると同時に、宿主遺伝子解析についても、癌組織・非癌部組織も合わせてより網羅的な解析を行ってゆく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
Magn Reson Med Sci.
巻: 15 ページ: 251-2
10.2463/mrms.ci.2015-0133