研究課題/領域番号 |
16K09351
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
伊藤 弘康 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (80373075)
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研究分担者 |
清島 満 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10171315)
石川 哲也 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (10288508)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | B型肝炎 / 動物モデル / HSV-TKマウス |
研究実績の概要 |
昨年度は、野生型のHSV-TK-WT(TK-WT)マウスを用いて、新規HBV感染モデルを安定的に作製するため様々な条件設定を行った。 作製したTK-WTマウスにガンシクロビルを腹腔内投与することによりHSV-TK遺伝子が導入されている肝細胞が傷害を受け脱落するが、適正なガンシクロビル投与量を検討した。ガンシクロビル投与後、MHCクラスをそろえたH2LdのHBV Tgマウスの肝細胞を移入した。HBVTgマウスからの肝細胞採取は、コラゲナーゼによる還流法を用いた。(現在、申請者らによる手技では約90%の生きた肝細胞の採取可能である)HBVTgマウスの肝細胞採取後、肝細胞を経脾臓的に移入しその後、移入した肝細胞が生着しているのを確認するため、経時的に血液および肝臓を採取した。血液中のHBs抗原を測定したところ、検出は困難であった。しかしながら、肝組織を用いてHBs抗原量を測定したところ検出可能であった。さらに、肝組織を用いて肝細胞内のHBs抗原量を免疫染色法にて検討したところ抗原陽性細胞が、最大で50%ほど置換していることが確認できた。ガンシクロビルの投与量が多すぎるとマウスは死亡しやすくなる傾向にあり、一方、少ないとHBVTg肝細胞の定着率が低くなることが確認できた。また、Valガンシクロビルも使用したが、適正投与量について検討中である。 次に、8から10週での肝細胞移入後のHBs抗原に対する宿主免疫応答を検討した。血清を使用して、HBs抗体を測定したところ、移入後、1週間で抗体の出現を認め、長期(10週)にわたり持続していた。HBs抗原に対する細胞性免疫応答の検討を行うため、脾細胞を用いて、ELISPOTアッセイを行った。検討数は少ないが、細胞性免疫とHBVTg肝細胞の定着率に関連を示唆するような結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、実験動物中央研究所より入手したHSV-TK-NOGマウス(H2Ld)と野生型(WT)マウス(H2Ld)を掛け合わせ、野生型のHSV-TK-WT(TK-WT)マウスを作製し、HBVTg肝細胞を移入し、短期間でのHBV陽性細胞の検出が可能であることを確認した。昨年度は、HBVTg肝細胞の定着率を50%まで上げることが可能であることを確認できたため、進展できたものと考える。また、Valガンシクロビルを使用したり、肝細胞を門脈から移入することを検討するなど、様々な検討を加えることにより、モデルマウスの安定的な作製に近づいていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の検討では、TK-WTマウスを作製し、ガンシクロビル投与後、HBVTgマウスの肝細胞を移入することで、宿主の肝組織でのHBVTg肝細胞の50%の置換が確認できた。しかしながら、移入したすべてのマウスで確認は困難であり、置換を確認できたのは、一部のマウスのみであった。したがって、本年度も、置換効率を上げるため、移入方法(経脾臓的または経門脈的)や移入細胞数、さらに、移入時期(ガンシクロビル投与後)を詳細に検討する。これらの検討により安定したモデルの確立を目指し、その後、宿主免疫応答の検討を行う。昨年同様、液性および細胞性免疫応答の検討を血清中のHBs抗体の測定や、ELISPOTアッセイを用いた実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)モデルマウス作製後、長期に経過観察した後に解析をすることが多かったため、結果的に解析数が少なく解析費用が抑えられたと考えられる。また、様々な検討を行ったため、モデル作製中に死亡する個体もあり、結果的に解析数の減少につながったと考えられる。
(使用計画)今後は、安定的なモデル作製が可能であると考えられるため、解析数を増やし、その解析費用とする。
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