本研究では、宿主免疫応答の解析が可能な新規HBV感染症小動物モデルを作製することである。 Herpes Simplex Virus-1 Thymidine Kinase (HSV-TK)の発現遺伝子を組み込み肝臓特異的に発現する遺伝子改変マウス(HSV-TKマウス)を使用して、ガンシクロビル(GCV)を本マウスへ投与し肝細胞を脱落させた後、HBVトランスジェニック(Tg)マウスから採取した肝細胞を移入することで、新規HBV感染マウスモデルを確立する。はじめに、HSV-TKマウスにGCVを容量別に投与した。GCV50 μg/gの濃度で腹腔内投与から1週間後、ALT 600U/L以上となった。GCV投与によるALT値が600U/L以上のマウスを宿主マウスとして使用した。HBV-Tgマウスの肝細胞を採取は、リベラーゼを加えたコラゲナーゼ還流法を使用した。HBV-Tg肝細胞1x10⁶個/200μlを経脾臓的に移入して6週、8週、20週の肝組織をHBsAgの免疫組織学的検討にて評価した。HBsAg陽性域は、6週 : 6.1%、21.2%、8週 : 45.5%、0%、43.3%、20週 : 15.9%、17.2%となり、HBV-Tg肝細胞を移入して少なくとも20週まで肝組織におけるHBsAg陽性域を認めた。肝細胞移入後、2週、6週、8週、20週のHSV-TKマウスから採取した凍結肝組織を用いてHBV遺伝子を定量した結果、移入後2週、6週、8週の順で上昇傾向を示し、20週では低下傾向を示した。タンパク抽出液によるHBsAg値もHBV遺伝子の定量結果と同様の傾向を示した。肝細胞移入後、脾臓細胞におけるIFN-γ産生能をELISPOTアッセイで評価したところ、HBsAg陽性域0%のマウスでIFN-γ産生能が高かったのに対して、HBsAg陽性域を認めたマウスのIFN-γ産生能は低い傾向だった。
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