研究課題/領域番号 |
16K09352
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
清水 雅仁 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90402198)
|
研究分担者 |
白木 亮 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (60402195)
白上 洋平 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50632816)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | メタボ肝癌 / 臓器間ネットワーク / 生活習慣病 / 非アルコール性脂肪肝炎 / 核内受容体RXR / レチノイド |
研究実績の概要 |
本研究では、肥満や糖尿病をはじめとする生活習慣病を背景とした肝細胞癌(メタボ肝癌)の新規予防法(薬)の開発をめざしている。当該年度の基礎研究の成果として、ビタミンA誘導体レチノイドシグナルが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)関連肝発癌に対して抑制的に働くことを明らかにした(Oncotarget 2017)。本件研究成果は、レチノイドや同関連シグナルを制御することで、NASHや肥満に関連する肝発癌が抑制できる可能性を示唆するものである。また膵癌や大腸癌転移を詳細に観察できる新規動物モデルを作成し、脂肪肝がmetastasis-resistanceな環境であることを明らかにした(Anticancer Res 2017)。発癌や転移の腫瘍微小環境における肝脂肪化の役割について、更なる検討が必要であると考えられた。 臨床研究の成果として、NASHを含めた慢性肝疾患患者のデータベース作成をすすめ、サルコペニア(骨格筋量と筋力の低下)が肝細胞癌患者の予後規定因子であることや、ミニマル肝性脳症の発症予測因子であることを明らかにした。これらの研究成果は、特に臓器間ネット-ワークにおいて「肝筋相関」の異常が肝硬変・肝細胞癌患者の予後やQOLに大きく関与している可能性を示唆するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生活習慣病・NASH関連肝発癌を制御する分子異常を明らかにする新規動物モデルとして、レチノイド欠乏マウス(lecithin: retinol acyltransferase-deficient mice)の有用性を報告した。生活習慣病・NASH合併慢性肝疾患患者の臨床検体収集(血清、画像)を進め、データベースの拡充を継続的に行い、発癌、予後予測因子等の解析が適時可能な状態にした。 平成30年度以降の計画として、レチノイド核内受容体RXR遺伝子改変マウスを用いた新規生活習慣病・NASH関連肝発癌モデルの作製・解析に関する研究を継続する。現在、phenotypeの解析やpreliminaryな検討を行っている。 臨床研究として、抗酸化作用・発癌抑制効果を有する緑茶カテキン抽出物を用いた、肝癌再発抑制を目的とする前向き介入試験を継続する(現在、患者エントリーを進めている)。本研究では、メタボ関連biomarkerの推移についても評価していく。
|
今後の研究の推進方策 |
レチノイド欠乏状態が肥満関連肝発癌に対して抑制的に働く可能性が明らかになったため、同分子が過栄養に関連したエネルギー代謝や炎症シグナルに及ぼす影響を明らかにする必要がある。レチノイド核内受容体の制御異常が、臓器間ネットワークの恒常性の破綻とメタボ肝発癌に及ぼす影響について、引き続き詳細な解析をすすめる。また脂肪肝(炎)による微小環境の変化と腫瘍免疫の変容に関する検討も行う。さらに、肝臓癌と同じく「メタボ癌」の側面を持つ大腸癌や膵癌に関する研究も展開していく。 臨床研究に関しては、引き続き慢性肝疾患患者データベースの拡充を図るとともに、分岐鎖アミノ酸、カルニチン、生活習慣病治療薬を用いたメタボ関連肝発癌予防に関する臨床介入試験の準備を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 来年度より本格稼働するため、実験器具・試薬の購入費増加が予想される。従って翌年度への繰り越しが生じた。 (使用計画) 主な支出は実験器具・試薬の購入が考えられ、また中間成果発表の為、国際学会ならびに国内学会での発表旅費が考えられる。
|