研究課題
本研究では、重症の急性・慢性肝不全などに対する肝細胞あるいは幹細胞由来肝様細胞移植のモデルとして肝細胞キメラマウスを作製し、移植肝細胞に対する免疫拒絶に関しての検討を試みた。ヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)のチミジンキナーゼ遺伝子(TK)を肝細胞において発現するトランスジェニックマウス、HSVtk-tgではガンシクロビル(GCV)投与によりTKを発現する自己肝細胞が死滅し、他個体からの肝細胞移植が可能となる。我々はC57BL/6、Balb/cと遺伝的背景の異なるHSVtk-tgに対し、C57BL/6由来のGFP発現トランスジェニックマウス(GFP-tg)から分離した肝細胞を移植することで、同系(Auto)、異系(Allo)条件下でのGFP発現肝細胞移植モデルを作製した。移植8週後のAutoモデルでは、18.2%から73.2%の肝細胞がGFP陽性となり置換率の高いマウスほど、体重増加、移植後のALT値の低下が明らかな傾向がみられた。また、GFP陽性肝細胞の周囲に炎症細胞浸潤を認め、GFPに対する免疫応答が誘導されていることが示唆された。移植8~11週後のAlloモデルではGFP陽性細胞は認めず、体重増加、ALT値の低下も認めなかった。肝組織像では、GCV単独投与(Sham)モデルと類似した変性肝細胞が主体であった。ただし、AlloではShamにはない大血管周囲の線維化像を認め、生着後のアロ肝細胞に対する拒絶応答の結果と考えらえた。Alloから分離した脾細胞と、GFP-tg脾細胞などドナー側の細胞との混合培養によるリンパ球混合培養反応(MLR)を実施し、レシピエントの免疫系によるアロ抗原、外来抗原に対する免疫応答が惹起されていることが確認された。肝細胞キメラマウス作製系は、肝細胞移植治療における免疫拒絶の機序の解明、治療法の構築に有用なモデルとなり得ることが確認された。
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