研究課題/領域番号 |
16K09355
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
杉本 和史 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (60378370)
|
研究分担者 |
江口 暁子 三重大学, 医学系研究科, 特任助教(研究担当) (00598980)
白木 克哉 三重大学, 医学系研究科, 連携教授 (90263003)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 脂肪肝 / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
【方法】HepG2を500μMのパルミチン酸(PA群)、もしくはコントロールとして1%のウシ血清アルブミン(BSA群)存在下に培養し、24時間後に培養上清中のEV を超遠心により回収した。血管内皮細胞であるHUVECと培養血管平滑筋細胞それぞれの培養液にEVを添加し、24時間後の遺伝子発現の変化をリアルタイムRT-PCR により検討した。また、血管平滑筋細胞ではEVによる増殖能、遊走能の変化をそれぞれMTTアッセイ、リアルタイム細胞アナライザー(xCELLigence system)に より解析した。 同様の検討をより細胞障害性が弱いオレイン酸(OA)添加でも行った。【結果】HUVECでの検討ではEV添加によりPA群、BSA群の2群間において接着因子、eNOS、トロンボモデュリン、エンドセリン等の遺伝子発現の変化は認められなかった。血管平滑筋細胞ではPA群由来のEV添加によりBSA群に比して抗アポトーシスに働くBCL2A1とBCL2L1、炎症性サイトカインであるTNF-α、 MCP-1、IL-1βなどの遺伝子発現の有意な増加が認められた。また、PA群のEV添加により平滑筋細胞の遊走能は有意に亢進が認められた。PA群、BSA群由来のEV添加により細胞増殖能に変化は認めなかった。また、OAを添加し得られたEVでの検討では、EV添加によりHUVECの細胞遊走能は亢進したが、遺伝子発現には変化を認めなかった。【結語】脂肪化肝細胞由来のEVは血管平滑筋の炎症、抗アポトーシス等の遺伝子発現変化を増強させ、また遊走能を亢進させることにより積極的に動脈硬化発症に重要な役割を演じることが示唆された。この現象はPAによる脂肪化細胞に特異的であることも判明した。今後マウスを使用してvivoでも同様の事象が認められるかを検討予定である
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H29、30年度は培養細胞を用いた検討を行った。この結果により脂肪肝由来の細胞外小胞は血管内皮細胞には接着因子や炎症関連の遺伝子発現、および細胞増殖能に 影響を与えなかったが、血管平滑筋細胞には細胞外マトリックス、炎症、抗アポトーシス関連遺伝子の発現に影響を与えるほか、細胞遊走能を高めることが示された。また、この結果はオレイン酸添加では認められず、パルミチン酸による脂肪化細胞に特異的な事象であることも判明した。これらの結果をうけて、脂肪肝マウスの血清からEVを抽出し、マウス血管平滑筋に与える変化を同様に検討予定であったが、脂肪肝マウス作成に当初の予定以上の時間がかかり、実験を施行することができなかった。このため研究期間の延長を申請することとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は培養細胞で得られたデータをもとにマウスでの実験を中心に行う。マウスに高フルクトース、高コレステロールを与え脂肪肝マウスを作成し血中より抽出した細胞外粒子でも同様の検討を行う。得られた細胞外粒子と平滑筋細胞 と共培養し、遺伝子発現、細胞増殖に与える影響を検討する。また、同時に血中で増加した細胞外粒子が肝細胞由来であることも確認する。最終的には肝細胞より由来する動脈硬化関連細胞外粒子が実際にヒトでも存在するか否かを脂肪肝患者血液中の細胞外粒子を用いて検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H30年度で脂肪肝マウスを作成し、vivoでの実験を行う予定であったが、当初の予定以上のマウスが必要であり、マウス作成に4か月かかるため、十分な実験を行うことができなかった。現在マウスは順調に作成されている。マウス作成後に血中よりEVを抽出し、血管平滑筋に対する作用を解析する。助成金はマウスの購入、飼育費用、高コレステロール・高フルクトースを含む餌代、解析に使用する試薬に使用する。
|