研究課題
筆者らはゲノム不安定性が解き明かす非アルコール性脂肪肝炎の発癌ポテンシャルという研究課題を遂行している。我々は脂肪沈着と炎症を主体とするNASHにおいてDNA2重鎖切断・ゲノム不安定性が生じ、長期的には発癌へ寄与しているのではないかとの仮説を立てた。そこで、パイロットスタディとして、これまで計49例の肝生検を用い、正常肝、単純性脂肪肝、NASH肝において53BP1の発現について解析した。正常肝と比較し、単純性脂肪肝では53BP1核内フォーカス出現数に差はなかったが、NASH肝では約6倍の53BP1核内focus の形成が見られた(p<0.01)。この現象は,飽和脂肪酸が中性脂肪として肝細胞内に安全に貯蔵されている段階ではDNA損傷は現れず、遊離脂肪酸が貯蔵キャパシティを越え、毒性を発揮している状態のみDNA損傷が出現しているということを示唆している。我々が研究を重ねてきた中、これまで腫瘍形成段階で認められていた53BP1核内focus出現が、炎症をともなった代謝性疾患であるNASHで認められるという事実は大きな発見であった。これは理組織学的に癌の可能性が診断される遥か以前の状態におけるDNA損傷の存在を示している。上記の成果は国際学会で発表を行った。今後はマウスを用いた高脂肪NASHモデルにおいて53BP1発現の検討を行い、病態増悪に伴うDNA二重鎖切断の増加を経時的に証明する予定である。
2: おおむね順調に進展している
既に訳50例の症例を集積し、53BP1の発現に関して一定の傾向を把握している。また、国内外の学会ですでに研究成果の報告を行っている。
今後は高脂肪食により経時的に発癌するマウスモデルを用い、通常マウスに比べてDNA二重鎖切断が増加することを証明する予定である。また、アレイCGHを用いて検出したゲノム不安定性の程度と53BP1核内フォーカスが相関することを証明する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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