研究課題
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の一部は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、さらに肝硬変、肝癌へ進展するが、その病態については不明な点が多い。過剰な遺伝子損傷応答は遺伝子不安定性および発癌と関連している。53 binding protein 1(53BP1)はDNA二重鎖切断に反応しDNA損傷部位に集積する。53BP1は放射線刺激や多段階発癌の過程で核内focus を形成することからDNA不安定性マーカーとして知られている。我々は53BP1を用いNAFLDにおける遺伝子損傷応答を検討した。52人の正常およびNAFLD患者肝生検標本における肝細胞の核内53BP1発現を検討した。53BP1核内focus 3個以上を異常focus と定義し、異常focus の中で直径1μmのものをlarge focusと定義した。肝生検組織では、正常肝およびと比較し、NAFLDにおける53BP1 の集積が優位に上昇していた(p<0.01). このうち、Large focus の出現頻度は線維化を有するNAFLDにおいて、線維化が見られない症例と比較して優位に上昇していた。NAFLDの病理学的検討では、large focus は、線維化スコアとの相関を示した。また large focusはCRPおよび年齢と正の相関関係を示し、血小板数との負の相関が見られた。飽和脂肪酸100μmで刺激された遊離肝細胞では有意な53BP1 focus 数の増加が見られた。この現象はcaspase-3依存性であった. NASHおよび飽和脂肪酸により刺激された肝細胞において、少量の酸化ストレス、caspase-3 によるDNA二重鎖切断が惹起されていることが示唆された。53BP-1は将来発癌のリスクマーカーとしても有効である可能性があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
上記のごとく、NASHと53Bp1発現の関連を証明することができ、Modern pathology 誌に投稿、アクセプトされている。
今後はNASH発がん症例を集め、53BP1 が肝臓癌発生リスクとなりうるかを具体的に証明していきたい。さらなる症例の集積が必要である。
NASHにおける発がんについて、さらなる症例集積と解析が必要と考えた。
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Modern pathology
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