研究課題
HBV感染によって誘導される肝線維化メカニズム解明のため、細胞内にHBV粒子が存在する状況下で細胞ストレスが発生しているか検証した。まず培地中のテトラサイクリンの有無でHBV産生を誘導可能な細胞株HepAD38.7を利用し、HBV産生によって細胞内ストレスシグナルがどのように変動するか検証した。HBV産生誘導開始からウイルス抗原量、ウイルスDNA量を測定しHBV産生を確認するのと並行して、代表的な細胞ストレスである小胞体ストレス関連遺伝子(PERK,ATF6,IRE1a,Grp78,eIF2a,ATF4,XBP1 等)抗ROS 産生関連遺伝子(SOD、Keap1 等)の発現量をqPCRで測定した。ウイルス増殖はDay10でピークを示したのに対し、ストレス関連遺伝子はほとんど変動を示さなかった。次にHBV持続感染状態における細胞ストレスの状態を検証するため、ヒト肝臓細胞を肝臓障害SCID マウスに移植したヒト肝キメラマウス由来の primary human hepatocytes:PHHに対しHBVをを感染させ、長期感染状態を維持しつつ細胞ストレス関連遺伝子の変動をqPCR解析した。PHHにおいてDay40まで感染を維持し、小胞体ストレス関連遺伝子、抗ROS 産生関連遺伝子等の発現を検出したところ殆どの遺伝子は発現変動しなかった。in vitro実験系では細胞ストレスの変動を検出できなかったので、次にヒト肝キメラマウスへのHBV感染実験で得た肝臓組織内を用いてストレス関連遺伝子の発現変動を解析する予定である。
3: やや遅れている
HBVによる細胞ストレス誘導実験系(in vitro)がまだ確立されていない。HBV産生細胞のHepAD38.7もしくは遺伝子導入によるHBV産生に用いられるHuh7細胞に対し、細胞輸送阻害剤を添加した場合は細胞ストレス関連遺伝子の発現が上昇した。どちらの細胞株も、少なくとも小胞体ストレスに対する関連遺伝子発現は変動することが確認されたので、HBVのウイルス量の不足、HBV産生の維持時間不足等々が理由で細胞ストレスが生じていないと考えられる。他の実験系を検討するための時間が必要である。
細胞ストレスが誘導されるHBV産生・感染実験系の再検討・選択を行う。HepAD38.7ではDay10まで,PHH感染でもDay40までのモニターだったので、ヒト肝キメラマウスへのHBV感染実験で得た肝臓組織を用いてストレス関連遺伝子の発現変動を解析する。またストレス誘導に十分なHBV産生を得るため、transfection系も検討し多量のウイルス・ウイルス蛋白による細胞ストレス誘導を検証する。以上の結果、in vitro実験系で解析困難であるとの結果となったらTg mouse等のin vivoでの解析系を検討する。またこれまでqPCRでのストレス関連遺伝子の変動を検出してきたが、小胞体ストレスは関連蛋白のリン酸化によるシグナル伝達が行われるのでウェスタンブロットなどタンパク質リン酸化検出手法も取り入れる。
実験スタートから2年目に入り、研究計画に則って進めているがやや実験計画より遅れ気味である。当該研究計画を進めるための実験系の検討を進める必要があるため、平成29年度も継続して実験を行えるよう予算を継続したい。
実験計画の見直しのため新規抗体の購入等多少の変動はあるが、基本的に初年度と同様の実験関連の消耗品・試薬を購入するために用いる(物品費に当たる)。内訳は細胞培養関連物品・遺伝子解析試薬などである。人件費・謝金等は生じない予定である。大型備品の購入予定はない。
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J Med Virol.
巻: 89 ページ: 257-266
10.1002/jmv.24641
巻: - ページ: -
10.1002/jmv.24763