研究課題/領域番号 |
16K09367
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
西川 太一朗 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90433250)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝細胞 / 肝不全 / リプログラミング |
研究実績の概要 |
本研究は、慢性肝不全の病態をひき起こしている肝細胞のエピジェネティックな形質変化およびそれを引き起こしているマスター因子の同定を行い、新規の慢性肝不全の治療法を開発することを目的とし、その実現に向けた取り組みとして、今年度の研究成果は主に以下の2点に分けられる。 1.ヒト正常肝および肝硬変から採取した細胞サンプル、組織サンプルから抽出したtotal RNAおよびmiRNAサンプルを用いたマイクロアレイ解析により、肝硬変での肝細胞では、FOXA1・HNF4Aといった肝細胞特異的転写因子の発現の低下とその下流シグナルに存在する肝細胞特異的遺伝子群の一部が発現低下し、肝細胞機能の低下につながっていると考えられた。現在、mRNA-miRNAの統合解析の結果から、FOXA1・HNF4Aの制御に関わるマスター因子miRNAの同定をすすめている。 2.上記のmRNAアレイで発現変動のあった遺伝子群を、KEGGマッピングにより解析すると代謝パスウエイのなかでも酸化的リン酸化経路の低下が上位にランクされ、ミトコンドリアにおける電子伝達系複合体(complex1, complex3-5)を構成する複数の遺伝子の発現が低下しており、エネルギー産生を主体としたミトコンドリア機能の低下が肝硬変肝細胞で生じていると考えられた。肝細胞におけるATP産生は、様々な代謝機能をつかさどる肝細胞機能の維持に極めて重要であるため、肝不全肝細胞で変化が生じている主要な代謝経路および治療標的の特定を引き続きすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度にヒト慢性肝不全症例からのサンプルを用いて抽出されたkey factorを標的としたリプログラミン治療の効果を解析する予定であったが、当該施設での肝移植手術が執刀医の不在により中断となり、新規サンプルの入手が困難となった。そこで現在、肝細胞の代謝パスウエイの変化に焦点をしぼり、肝不全肝細胞における細胞機能低下につながるkey pathwayの特定をすすめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は肝細胞レベルで変化している代謝パスウエイを特定することを目標とし、細胞サンプルを用いたメタボロミクス解析の追加と、既存データとの統合解析を予定している。これにより代謝機能改善に基づいた慢性肝不全の治療標的の特定を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規のヒト肝細胞検体のサンプリングが困難となったため、前年度計画していた実験の一部を変更修正し、本年度に移行し、次年度計上した助成金を使用する。用途としてはメタボロミクス解析に関わる費用や代謝産物の測定に必要な試薬などの物品費に充てる。
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