研究課題/領域番号 |
16K09369
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
榎本 大 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20423874)
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研究分担者 |
村上 善基 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (00397556)
河田 則文 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (30271191)
田守 昭博 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30291595)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクロRNA / SVR / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
経口IFNフリー治療によりC型慢性肝炎のほぼ100%の症例に持続的ウイルス排除(SVR)が期待できるようになったが、高齢化し肝線維化が進行した我が国の患者においては、SVR達成後も相当の割合で肝発がんが起こる。そこでSVR後の肝発がん機序を解明し、非侵襲的なバイオマーカーなどにより高リスク症例を囲い込み、効率的にフォローアップできる体制の構築が望まれる。我々はC型慢性肝炎の肝線維化進展過程においてマイクロRNAが深く関係することを明らかにし、特にmiR-222がバイオマーカーになり得ることを示した(Ogawa T, Enomoto M, et al. Gut 2012)。今回の研究では、C型慢性肝炎からSVRを得た患者の肝組織、血液中で肝線維化の進展に関連して変動し、肝線維化マーカーまたは肝発がんリスクマーカーとして利用可能なマイクロRNAを、マイクロアレイ、リアルタイムPCRを用いて同定することを目的とする。 初年度には、対象であるIFNフリー治療後のC型慢性肝炎・肝硬変患者において肝生検組織と血清の採取を進め、病理組織学的診断を行うとともに臨床背景(年齢、性別、血液生化学所見、ウイルス学的検査、病理学的検査)のデータファイルを作成した。SVR後の肝組織にも壊死・炎症が残存していた症例においては、脂肪性肝炎の有無など肝障害を来し得る他要因を検索した。過去に治療前の肝生検組織が採られていた症例に関しては、治療前後の比較を行った。更にreal-time PCRを用いて、肝組織中のHCV RNAの検出も試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療後の肝生検組織と血清の採取はおおむね順調に進展している。 対象はSVRを獲得しALTが正常化した症例のうち、同意が得られた49例(64±11歳、女性26例、ALT 20±12 IU/L、血小板数17.7±5.2万/μL)であり、IRB承認を得てSVR12判定後28±19週後に肝生検を行なった。 SVR後肝生検のA因子(0/1/2/3)は11/27/10/1例、F因子(1/2/3/4)は23/21/3/2例であった。22例では3.4±2.9年前との比較が可能で、A因子の変化1.2±0.7→1.0±0.9(改善9/不変9/悪化4例)、F因子の変化1.9±0.9→1.7±0.8(改善8/不変11/悪化3例)は、いずれも有意でなかった。A2以上の炎症が残存していた11例中4例はBMI 25以上で治療前より体重増加があったが、明らかな脂肪性肝炎は1例のみであった。肝組織HCV RNAは、real-time PCRを行ない得た25例では、いずれも陰性であった(Enomoto M, et al. Gastroenterology 2017 in press)。
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今後の研究の推進方策 |
・マイクロRNA発現の網羅的解析:マイクロアレイを用いて肝内と血中のマイクロRNAの発現プロファイルを網羅的に解析し、線維化ステージ別の比較、治療前後の比較、発がん例と非発がん例の比較などを行う。 ・候補のマイクロRNAの定量的解析:マイクロアレイ解析の結果、肝線維化、肝発がんに関与していると想定されるマイクロRNAの血中での変化を、リアルタイムPCRを用いて定量的に解析する。 ・統計解析:IFNベース治療症例の後向き検討、IFNフリー治療症例の前向き検討により、肝発がんリスクマーカーの候補を同定する。得られたマイクロRNAに関しては、直接的なターゲットとなる配列を持つ遺伝子をmiRBase等のin silico解析により絞り込み、マイクロRNAと標的遺伝子の3’UTR領域の結合度を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度からマイクロアレイを用いた肝内と血中のマイクロRNAの発現プロファイル解析を網羅的に行う予定であったが、その進捗がやや遅れていることが次年度使用額が生じた理由としてあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にはマイクロRNA発現の網羅的解析に引き続き、候補のマイクロRNAの定量的解析、統計解析を予定している。
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