研究課題/領域番号 |
16K09372
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
持田 智 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (20219968)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肝臓学 |
研究実績の概要 |
オセロ仮説と2-ヒット仮説はdeep sequencingの手法で証明することを完了した(Uchida Y, et al. Hepatol Res 2016; 46:234-1246. Uchida Y, et al. Hepatol Res 2017 Feb 27.)。 このためDAAの範囲を核酸型NS5B阻害薬であるsofosbuvir(SOF)を用いた治療に拡大し,その効果を規定するNS5B-RASの成立機序を検討した。SOFとNS5A阻害薬であるledipasvir(LDV)の配合錠による治療でvirologic failureとなったgenotype 1bのHCV感染者を対象に,NS5B領域のアミノ酸配列を解析し,全例でA207T,A218S,N316N,Q464E変異が認められることが判明した。SOF未投与の108例では,これら4変異を有するHCV株は44例(42.6%)であり,NS5B領域の塩基配列を基にした系統樹解析では,genotype 1bのHCV株は,C316N変異の有無で2つのクラスターに分類された。Bioinformaticsによる検討では,aa207,aa218,aa316は活性化SOFの通過するNTPトンネルに沿って位置し,特にaa218は表面に露出していた。分子動力学シミュレーションでは,NS5BポリメラーゼにA218S変異を加えると,NTPトンネルを通過する際に必要なエネルギーが,UTPに比して活性化SOFで大きくなることが判明した。Aa218がAからSに変化すると同部位の環境が疎水性から親水性に変化する。UTPはフラン環の2位炭素に親水性の水酸基が付加しているのに対して,活性化SIFでは同部分には疎水性のフッ化メチル基が結合している。このためA218S変異のあるNS5Bポリメラーゼでは,NTPトンネルの通過効率が,UTPに比して活性化SOFで低下するため,virologic failureに繋がると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
NS5A-RASに関する検討は予想以上に早期に進行している。オセロ仮説,2-ヒット仮説ともに,deep sequencingの解析が早期に終了し,予想以上に明確な成果が得られたことに起因している。このためNS5B-RASにも範囲を広げたが,早々にNS5B-A218S変異という有力な候補を見出し,bioinformatics,分子動力学シミュレーションなどの先端技術を利用することで,originalityの高い成果を得ている。同研究も現在,論文化しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
NS5A-RASに関しては,DCV/ASV治療のvirologic failure例に対してSOF/LDV治療を実施した場合の変動を,deep sequencingで検証することが課題として残っている。NS5B-RASはbioinformaticsおよび分子動力学シミュレーションによる検討を,genotype 2a,2bのHCV株にも広げることが課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入を検討しましたが金額が端数のため使用できませんでした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に物品購入等で使用する予定です。
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