研究課題/領域番号 |
16K09372
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
持田 智 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (20219968)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HCV / NS5A複製複合体 / NS5Bポリメラーゼ / DAA / Bioinformatics / Deep sequencing |
研究実績の概要 |
2-ヒット仮説に関して,NS5A-P29delないしNS5A-P32delの成立機序をdeep sequencingとbioinformaticsの手法で検討した。HCVのNS5A蛋白はS25までが膜貫通部分,S38以降が2量体を形成するdomain-1であると考えられた。従って,K26からF37までは膜貫通部分とdomain-1を繋ぐ非構造領域で,P29,P32,P35とプロリンが規則的に配列していることが判明した。NS5A-P29delないしNS5A-P32delが認められた4症例で,deep sequencingを実施したところ,これら欠損株のquasispeciesはダイナミックに経時的変化を遂げることが明らかになった。一般に,これら欠損株は増殖能が低く,deep sequencingでも完全に消失した後に,SOF/VEL+RBV治療を実施した症例ではSVRが得られた。しかし,これら欠損株はL31M/F/Iなどの変異も加わるを増殖能が高度となり,これらがmajor cloneになると,欠損株は長期間存続することが判明した。また,L31M/V/I+Y93H株がmajor cloneとなり,L31I+P32delがminor cloneとなった時点でGLE/PIB治療を実施してもSVRは得られなかった。以上より,これら欠損株は自然に消滅することもあるが,minor cloneであっても,残存していればDAA治療に高度耐性を示し,治療時期に関してはdeep sequencingを実施して,慎重に決定すべきと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
NS5A-RASに関する検討は予想以上に早期に進行している。オセロ仮説,2-ヒット仮説ともに,deep sequencingの解析が早期に終了し,予想以上に明確な成果が得られたことに起因している。このためNS5B-RASにも範囲を広げたが,早々にNS5B-A218S変異という有力な候補を見出し,bioinformatics,分子動力学シミュレーションなどの先端技術を利用することで,originalityの高い成果を得ている。その後は最も高度の耐性株であるNA5A-P29del,P32delの意義に関してさらに詳細な検討を進め,同株を含むquasispecisはダイナミックに経時変化を遂げており,DAA治療を実施する時期に関して,新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
NS5A-P29del,P32delに関しては,L31M/F/I変異を獲得せず,Y93Hを獲得させることで,増殖能を低下させ,これら高度耐性株を自然消滅させる方法を明らかにすることが課題である。また,NS5B-RASはbioinformaticsおよび分子動力学シミュレーションによる検討を,genotype 2a,2bのHCV株にも広げることが課題である。
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