研究課題/領域番号 |
16K09374
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中本 伸宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40383749)
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研究分担者 |
須田 亙 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 研究員 (20590847)
福田 真嗣 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任准教授 (80435677)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 腸肝相関 / IL-17 |
研究実績の概要 |
1. 当院に通院中の腸管病変を合併したPSC患者10名(男性9名女性1名、年齢中央値31歳)について、糞便中の腸内細菌の16S rRNAを用いたメタゲノム解析を行い、UC患者および健常人コントロール(HC)と比較検討した。PSC患者において健常人コントロールと比較して有意に腸内細菌叢の多様性が低く、またUniFrac解析の結果、PSC患者の糞便中の腸内細菌はUC、健常人と比較して類似度が異なる集団に属していた。さらに構成する各腸内細菌の解析の結果、PSC患者においてProteobacteria(Phylum)、中でもEnterobacteriaceae(Family)が有意に増加していた。 2. 腸内細菌叢と免疫細胞との相互作用を明らかにするために、患者由来糞便微生物を無菌マウスに経口的に移植しヒトフローラ化マウスを作製し、移植21日後に小腸、大腸、肝臓、脾臓各臓器における免疫細胞の解析を行った。健常人由来糞便微生物を無菌マウスに移植したHCマウス、同様にUCマウス、PSCマウスいずれにおいても無菌マウスと比較して、大腸IL-17産生T細胞(Th17)数の有意な増加を認めた。一方HCマウス、UCマウス、PSCマウス間で大腸Th17数の差は認められなかった。興味深いことにPSCマウスにおいて無菌マウス、HCマウス、UCマウスと比較して肝臓内Th17の増加を認めた。さらにPSCマウスは他のマウスと比較して3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine (DDC)投与により惹起した二次性胆管炎、肝線維化の増悪を認めた。 本結果からPSC患者腸内細菌に肝臓内免疫応答性Th17誘導に寄与する腸内細菌が存在する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無菌マウスを飼育するアイソレーターの数に限りがあるため一部の検討に遅れが生じているが、概ね順調に計画を遂行することができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降はPSC患者由来糞便微生物から肝臓内Th17誘導に寄与する腸内細菌の同定を試みる。具体的にはPSCマウスより肝臓、腸間膜リンパ節、脾臓を無菌的に摘出し、培養法、FISH法、PCR法を用いて腸管外にbacterial translocationした特異的腸内細菌の同定を目指す。 さらに、①ヒトフローラ化無菌マウスの抗菌薬(VCM, AMP, MNZ)投与による腸内細菌叢の変化、各臓器における免疫応答の修飾、②治療介入前後の患者から採取した腸内細菌叢を移植した無菌マウスの肝機能、肝臓内免疫応答性の相違を検討する。 上記のトランスレーショナル研究の成果をもとに、難治性肝胆疾患の病態進展に寄与する疾患特異的腸内細菌・代謝産物の同定と病態進展に寄与する免疫学的機序の解明を行い、腸肝相関を標的とする新規治療法の開発を目指す
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者である福田真嗣先生担当のメタボローム解析について、平成30年度にまとまったサンプルの解析を予定しているため。
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