研究課題
肝臓は高度の再生能を有するが、それには肝実質細胞と周囲の非実質細胞の協調した増殖・分裂が不可欠であり、特に肝再生後期に起こる肝類洞再構築は、肝再生が正常に終了出来るかどうかを規定する重要なステップである。オートタキシン (ATX; autotaxin) は血管新生・創傷治癒など多彩な機能を有する脂質メディエーターとして、リゾリン脂質の一つであるリゾホスファチジン酸 (LPA; lysophosphatidic acid) の産生に関わっているが、その制御機構には不明な点が多く、肝再生治療の新しい標的分子となる可能性が考えられる。一方、ATX は肝線維化調節因子としての役割も注目されており、血清 ATX の測定は慢性肝疾患に対するバイオマーカーとして既に実用化されている。肝再生と肝線維化との間には密接な関係があることからも、ATX と肝線維化ー肝再生の関連を明らかにすることには大きな意義があると考えられる。本研究では、ラット胆管結紮による肝障害モデルを用い、肝再生と ATX-LPA axis につき検討した。これまでに行なった血中 ATX 活性、血漿 LPA 濃度の測定については、肝再生過程で有意な変化が認められなかった為、肝組織中の ATX 量をオートタキシン抗体を用いて Western blotting で解析したところ、ATX 自体の検出は可能であったが、肝再生過程において有意な変化はみられなかった。一方、ラット2/3肝切除における肝再生モデルにおいて、血清 ATX 活性・量、および血漿 LPA 量を経時的に解析したところ、肝再生に特徴的な変化は認められなかった。先行研究によると、ラットに投与した ATX はスカベンジャー・リセプタを介して肝類洞内皮細胞に取り込まれると報告されて居り、今後は肝再生過程における肝類洞内皮細胞の ATX 活性と LPA につき検討したい。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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