研究課題/領域番号 |
16K09377
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
池上 正 東京医科大学, 医学部, 教授 (40439740)
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研究分担者 |
本多 彰 東京医科大学, 医学部, 教授 (10468639)
宮崎 照雄 東京医科大学, 医学部, 講師 (60532687)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 酸化ステロール / 胆汁酸 / 非アルコール性脂肪性肝炎 / 肝細胞癌 |
研究実績の概要 |
当初予定していたマクロファージを用いた解析が順調に進んでいないことから、胆汁酸代謝の中間産物としての側面をもつ酸化ステロール、健常者、NAFLD患者、NASH-HCC患者の3者間での胆汁酸分画解析の結果から酸化ステロールとの関連を読み解くことを目的として、胆汁酸代謝に主軸を置いた解析を行った。 ①NAFLD, NASH-HCCでは血清胆汁酸分画が健常者と異なること、②胆汁酸合成の律速酵素であるCYP7A1活性のサロゲートマーカーであるC4(4-choleten-3-one)の値は健常者とNAFLDでは大きく変動がないが、NASH-HCCでは低下していること、③血清FGF-19が、NAFLDでは既報のごとく健常者に比較して低下する傾向があるものの、NASH-HCCでは増加していること を明らかにした。 FGF-19は腸管上皮細胞中のFXRに結合し産生され、門脈から肝細胞に到達、肝細胞のFGFR4-beta klothoシグナリングを介してCYP7A1を抑制する。一方肝細胞癌の中にはFGFR4~FGF19シグナリングの活性化している群があることが知られており、独自のautocrine loopを形成して腫瘍細胞自体の増殖を促しているとされる。今回見られたNASH-HCC患者における血清中FGF19の増加が、NASH~NAFLDにおける脂質~胆汁酸代謝の変調の結果起こることなのか、あるいは発生した肝細胞癌に主として起因するものなのかが不明である。仮にこのFGF19増加が個体の胆汁酸代謝にも影響を及ぼしうる(C4低下に見られるように)ということであれば、これは肝がんの発生に胆汁酸が関与するというよりは、むしろ肝がん発生自体によって胆汁酸代謝が変動するという新しい概念につながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マクロファージに特化した検討を計画したが、十分なヒト患者からのサンプル採取が難しい。
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今後の研究の推進方策 |
特に非酵素的酸化ステロールの発生が関与する肝発がんについて、胆汁酸代謝を中心に検討する。FGF19~FGFR4パスウェイに着目し、胆汁酸分画の変化と同パスウェイの関連について、ヒトサンプル並びに培養細胞を利用して検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費については国際学会への参加があったが、他の資金を転用して今回は使用しなかったこと。 マクロファージ解析が進まず、サンプル解析のための物品費の使用額が少なかったこと。
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