研究実績の概要 |
原発性肝癌の根治的治療としては外科的切除が第一であり、早期には肝内病変治療としてラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈塞栓療法(TACE)等がときに有効であるが、遠隔転移、胆管・血管内浸潤を呈するようになると予後不良であるため、より早期の診断法の確立及び新規治療法が切望されている。現在、切除不能肝細胞癌に対して臨床で使用される腫瘍の細胞増殖と血管新生を阻害する分子標的薬の効果は非常に限定的である。このような背景から選択的に癌細胞(癌幹細胞)のみを傷害するような治療標的分子の同定による新たな新規治療法の開発が急務であると考えられる。本研究では、肝癌幹細胞における自己複製・分化・転移制御メカニズムを解明することで、将来的な癌幹細胞を標的とする新規治療法への開発応用を目指すことを目的とする。これまでに進行乳癌等でリン酸化酵素であるDYRK2発現低下が癌の増殖・転移・浸潤に関与することが報告されている(Taira et al. J Clin Invest, 2012 / Mimoto et al. Cancer Lett, 2013)。しかし肝癌におけるDYRK family分子の機能についての詳細は未だ不明である。そこで本研究では 、肝癌幹細胞におけるDYRK family分子の機能を解析し、肝癌の進展・転移制御機構の解明を目指すとともに、将来的に癌幹細胞を標的とした新規治療法の開発へと発展させたい。
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