研究課題
B型肝炎ウイルス(HBV)の根絶にはHBV産生の鋳型であるcccDNAを制御することが肝要である。細胞内における内因性抗ウイルス自然免疫のひとつと考えられるAPOBEC蛋白がHBVに作用する可能性について、臨床サンプルを用いて検討した。今年度はHBV DNA多様性を証明するために、HBV感染増殖期である急性肝炎初期血清を短いinterval(連日ないし1,2日間隔)で採取した。これまでに、すでに5名のB型急性肝炎患者血清を採取している。一方で、初年度は次世代シークエンサーの条件検討、ならびに遺伝子型の異なるHBVに対してもPCRが可能となるPrimer設計を行い、検討を進めた。しかしながら、血中ウイルス量(HBV DNA量)が5 logIU/mL未満ではPCR効率が悪く検出能に差を認めることから、より高感度にHBV DNAを検出するPrimer配列を検討中である。現在のPrimerは遺伝子型Cと遺伝子型AのHBV DNAに対するPCR反応は良好であるが、遺伝子型Bに対するPCR反応が不良であることから、再度遺伝子型AからDまでの塩基配列をアライメント作成し、検討を継続しているまた、HBV感染サイクルを再現するHBV感染細胞培養を用いたAPOBEC蛋白の効果検討については、HBV感染培養細胞の長期培養条件を検討した。さらにsiRNAによるノックアウト実験を行うために、APOBECファミリーそれぞれに特異性が高いsiRNA配列を検討し、その効果を検討中である。
3: やや遅れている
当初、当施設では毎月1~2名のB型急性肝炎患者が来院すると予測していたが、本年度は昨年度に比べて患者数が少なくサンプル収集が予定より遅れている。したがって、同時にB型慢性肝炎ないし他の慢性肝疾患の血清、さらに肝生検組織の収集を開始している。また、次世代シークエンサー解析のセットアップにやや時間を費やしているが、徐々に条件検討結果が集積されているため、今後は加速的に解析条件が決まるものと予測する。
当初の予定通り、in vivoとin vitroの実験系を同時並列的に進める。in vivoに関しては、次年度はHBV DNA多様性を検討するための次世代シークエンサー解析セットアップが完了する予定であり、まずはB型急性肝炎の血清サンプルを用いて、ヒトにおけるウイルス多様性を証明する。次に、in vitro実験では、HBV感染培養細胞の長期培養条件を決定し、ウイルス多様性に関与する宿主因子を明らかとする。当初の予定では、APOBECファミリーの関与が強く疑われるため、ノックダウン実験や強制発現実験を駆使した検討を開始する予定である。
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