研究課題
現行の治療法では、B型肝炎ウイルス(HBV)の根絶は困難である。現在、様々な新規治療薬が開発中であるが、未だにHBV産生の鋳型であるcccDNAを制御する治療薬ならびに治療法は未確定である。細胞内に寄生する病原体であるウイルスなどのPathogenに対する内因性自然免疫のひとつであるAPOBEC蛋白による抗HBV作用の可能性について、臨床サンプルを用いて検討中である。昨年度に引き続き臨床サンプルを収集するために、HBV感染増殖期である急性肝炎初期血清を短いinterval(連日ないし1,2日間隔)で採取している。既に12名のB型急性肝炎患者血清を採取することに成功した。急性肝炎を発症したHBVの遺伝子型は、Genotype Aが8例、Genotype Bが1例、Genotype Cが3例、であった。現在は次世代シークエンサー(NGS)による経時的なHBV DNAの多様性を検討中であるが、遺伝子型の異なるHBVに対してPCR効率が異なることからgenotype特異的なPrimer設計を行い、検討を進めている。また、血中ウイルス量の多寡によってPCR効率が異なることから、PCR条件を含めた検討を進めている。当初NGSはIllumina MiSeqを予定していたが、現在はPacBio によるロングリードデータにより数Kbの配列を一度に解読することが可能かどうか検討を進めている。今後、PacBioによるHBV解析が可能となれば、全長3.2kbの全HBV DNA配列を一度に解析可能となり、感染急性期のHBVゲノム多様性の解析が可能となると考える。また、HBV感染サイクルを再現するHBV感染細胞培養を用いたAPOBEC蛋白の効果検討については、HBV感染培養細胞の長期培養条件を検討中である。同時に、siRNAによるノックアウト実験を行うために、APOBECファミリーそれぞれに特異性が高いsiRNA配列を設計し、その効果を検討中である。
3: やや遅れている
次世代シークエンサー解析のセットアップに時間を要し、特にHBV遺伝子型によるPCR効率の相違を解決することに時間を要している。また、毎月1~2名のB型急性肝炎患者が来院すると予測していたが、近年は患者数が減少しサンプル収集が遅れていた。また、新たな次世代シークエンサー解析手法の登場により、様々な条件検討が必要となっている。ただし、徐々に臨床検体が集まり、また次世代シークエンス手法の検討も進んでいることから、今後は加速的に解析結果が出るものと予測する。
次年度は次世代シークエンサー解析を進め、当初予定したIllumina MiSeqの結果と、新規次世代シークエンス解析法であるPacBio によるロングリードデータの結果を比較して、HBV DNA多様性の証明にどちらの方法が有効であるかをまず検討する予定である。さらに、in vitro実験では、HBV感染培養細胞を用いて、ノックダウン実験や強制発現実験を駆使してウイルス多様性に関与する宿主因子を明らかとする予定である。
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10.1007/s12664-017-0755-3. Epub 2017 May 30.
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