研究実績の概要 |
我々は、これまでの全国調査によりB型急性肝炎における遺伝子型Aの割合が経年的に増加していること、遺伝子型Aによる急性肝炎終息後には他の遺伝子型ではほとんど認めない慢性化を7-8%の症例で認めることを明らかにしてきた(Hepatology 2014, J Gastroenterol Hepatol 2016)。本研究において、前回調査から5年が経過した2016年度にB型肝炎の全国調査を行うことにより、B型急性および慢性肝炎における遺伝子型分布の変遷を明らかにした。これまでに全国でB型急性肝炎127例、B型慢性肝炎4,419例の臨床情報を収集した。 最終集計結果を以下に示す。B型急性肝炎において遺伝子型解析の結果、遺伝子型Aが61例(48.0%)、Bが15例(11.8%)、Cが50例(39.4%)、Eが1例(0.8%)という結果であった。2011年の前回調査時には遺伝子型Aが47%であったため、前回調査時と遺伝子型Aの割合はほとんど変化していなかった。B型慢性肝炎に関しては、遺伝子型Aが188例(4.3%)、Bが714例(16.2%)、Cが3,480例(78.8%)、Dが31例(0.7%)、その他の遺伝子型は6例(0.1%)という結果であった。こちらも前回2011年の集計では、遺伝子型Aは4.1%であったため、B型慢性肝炎における遺伝子型Aの割合は微増にとどまっていた。B型急性肝炎の増加および慢性化率からするとB型慢性肝炎において遺伝子型Aの割合がさらに上昇するものと予想されたが、今回の調査では前回調査と比較して遺伝子型Aの増加はほとんど認められなかった。これは、成人感染のB型急性肝炎の遷延例を慢性肝炎に含めてしまっている可能性や母子感染や幼児期の感染と比較して成人感染で慢性化した症例は核酸アナログによりHBs抗原の消失を認めやすいといった要因が関連しているものと考えられた。
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