研究課題
昨年度の研究成果をもとに、肝癌の転移再発リスクを予測する分子スコアリングシステムを開発した。すなわち、125例の肝癌切除組織を用い、対応分析とクラスター解析の結果、 CNTTB1遺伝子変異なし、p53遺伝子変異あり、DNA繰り返し配列の脱メチル化あり、fractional allelic loss (FAL)の高値を転移再発のリスクと判断した。この結果より、肝癌の分子スコアリングを行い、独立した肝移植例の肝癌で分子リスク>3をaggressive molecular typeと定義し、再発を検討した。観察期間(中央値50.4ヶ月)で再発した6例(全例肝外再発)のうち5例がaggressive molecular typeを示した(p = 0.0090; log-rank test)。さらに、公共データベース(total cancer genome atlas: TCGA)を用い、結果の信頼性確認を行った。TCGAより、376例の肝癌切除例のexsome sequencing, HM450によるmethylome, Affymetrix SNP6による染色体コピー数解析結果をダウンロードし、治癒切除後の無再発期間(PFS)を検討した。データベースより抽出した肝癌初発根治切除性の解析でも、aggressive molecular typeは肝癌再発と有意に関連した(p = 0.0076; log-rank test)。以上より、肝癌においてTP53変異、CTNNB1変異、ゲノムワイド脱メチル化、染色体不安定性で設定した分子スコアは根治治療後再発と関連し、commonな遺伝子変化を検索することにより、再発リスク群を同定できる。転移再発リスクの高い症例は、局所療法に薬物療法を組み合わせる余地があり、、根治治療後のアジュバント療法を検討する余地があると考えられた。
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