研究課題
平成29年度は、2008年から2012年で当院にて背景をC型肝炎として発癌し、根治的肝切除術を施行した肝細胞癌203症例から術後5年以上無再発症例群:第1セット9例、第2セット13例と術後2年以内に多中心性発生様の再発を来した症例群 (早期再発群): 第1セット9例、第2セット17例の非癌部肝組織からDNAを抽出後、Methylation 450-BeadChipを用いて、常染色体上に位置する約47万箇所のCpGメチル化サイトのDNAメチル化レベルを取得した。一塩基多型に関連したCpGサイトならびにデータ取得率の悪いサイトを除いた計401,282箇所について、無再発群と早期再発群のDNAメチル化レベルの差を一般化線形モデル(GLM)により検定した。その結果、二つの解析セットに共通してp<.001を示したCpGサイトを8遺伝子領域10箇所に同定した。このうち9箇所は早期再発群において低メチレーションレベルを示していた。またこれら10サイトのメチレーションレベルを用いた主成分分析により、無再発群と早期再発群を識別することが可能であった。さらに、8遺伝子には転写因子、シグナル伝達分子、細胞増殖関連分子などが含まれていた。以上から、本研究で同定した非癌部肝組織のDNAメチル化領域のメチル化レベルは肝細胞癌の根治切除後の多中心性発生を予測する有用なマーカーになり得ること、さらにその領域に位置する遺伝子群は、多中心性発生の原因となる遺伝子候補となり得ることが示唆された。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からの肝発がんに関する検討においては、新たに肝の炎症、線維化、発癌をきたすモデルを作成中である。
3: やや遅れている
ヒト肝細胞癌切除例におけるDNAメチル化異常に関する検討に関しては、昨年度から症例の蓄積が新たに行われ、早期再発群で17例、無再発群で13例の症例が追加解析された。よって、ヒト肝細胞癌切除例におけるDNAメチル化異常に関する検討に関しては、おおむね当初の予定に沿って研究が行えている。一方、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からの肝発がんに関する検討では、モデルの作成に関し昨年度以来取り組んでいるがなかなか線維化の進展と肝発がん率が解析に適したモデルの作成がうまく行かず苦慮している。平成30年度も引き続きNASHモデルの作成を継続する予定である。
ヒト肝細胞癌切除例におけるDNAメチル化異常に関する検討に関しては、平成29年度まででDNAメチル化レベルの早期再発群と無再発群間での比較に関するMethylation 450-BeadChipによる解析とその結果をもとにした一般化線形モデル(GLM)による検定は終了した。平成30年度は早期再発群と無再発群間で差を認めるDNAメチル化サイトがコードする遺伝子をより詳細に解析する予定としている。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からの肝発がんに関する検討は、平成30年度も引き続き肝内の炎症、繊維化や肝発がんに関し評価可能なNASHモデルの作成を継続する予定である。
理由 学会旅費に使用予定であったが、必要なくなったため。使用計画 昨年度の残金は、平成30年度の消耗品に充てる予定です。
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