研究実績の概要 |
肝癌により国内だけでも年間3万人が死亡し、100万人以上の患者がいる。これらの患者は一般的に肝線維化と肝硬変を経て肝癌へと進行していくので、はじめのステップである肝線維化を抑制することが重要となってくる。また、肝線維化と血管新生が並行して起こることが知られており、血管新生を抑制することにより肝線維化も抑制できると考えられる。当研究課題では血管新生を調節するタンパク質であるバソヒビン-1,-2の発現を調節することにより血管新生と肝線維化を抑制することを目的とした。 バソヒビン-1,-2発現細胞を同定するために、それぞれを特異的に認識するウサギポリクローナル抗体を作製した。抗バソヒビン-1,-2抗体のどちらもELISAにより抗原ペプチドを認識することを確認し、さらに組換えバソヒビン-1,-2蛋白質を用いてELISAを行ったところ抗バソヒビン-2抗体のみ認識した。更にウェスタンブロットにより抗バソヒビン-1, -2抗体の特異性を確認したところ、それぞれ組換え蛋白質を特異的に認識した。これらの結果から抗バソヒビン-1抗体は変性したバソヒビン-1を認識し、抗バソヒビン-2抗体は未変性と変性したバソヒビン-2を認識することが明らかとなった。野生型マウスを用いて胆管結紮による肝線維化モデルを作製し、これらの抗体を用いて発現細胞の解析を行った。抗バソヒビン-1抗体により中心静脈周囲の肝細胞が染色され、抗バソヒビン-2抗体により血管周辺の肝細胞と動脈内皮細胞と偽胆管が染色され、これらの細胞が肝線維化モデルにおける発現細胞と考えられた。また、バソヒビン‐2欠損マウスを用いて肝線維化モデルマウスを作製し、肝線維化と血管新生に対するバソヒビン-2の働きを解析している。
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