研究実績の概要 |
肝線維化と血管新生は並行して起こることが知られており、血管新生を調節することにより肝線維化も同時に制御できると考えられる。バソヒビンは血管新生を抑制するバソヒビン-1と血管新生を促進するバソヒビン-2からなり、バソヒビン-1,-2の発現量を調節することにより血管新生と肝線維化を制御し、肝線維化を抑制する方法を開発することを目的とした。 今年度において、バソヒビン-2欠損マウスを用いて肝線維化モデルを作製し野生型マウスと比較した。バソヒビン-2欠損マウスでは肝線維化を促進する傾向が観られたが野生型マウスと比較して有意な差ではなかった。 肝細胞特異的にバソヒビン-1,-2とこれらの結合蛋白質であるSVBPを高発現させたトランスジェニックマウスを作製するために、アルブミンエンハンサーとプロモーターの制御下でバソヒビン-1,-2またはSVBPを発現するベクターを作製した。これらの肝癌由来の細胞株での発現を確認し、トランスジェニックマウスを作製する準備を行った。 肝線維化モデルにおいてバソヒビン-1,-2 mRNAの発現量が上昇することを示したが、発現細胞や発現時期などは不明なままであった。マウス・バソヒビン-1,-2をそれぞれ特異的に認識する抗体を作製し発現細胞を同定するために、バソヒビン-1と-2の間でホモロジーが低い部分の配列を基にペプチド抗原を設定し、ウサギ・ポリクローナル抗体を作製した。ウェスタンブロットと抗体染色で使用可能なバソヒビン-1,-2に対する抗体を得た。
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今後の研究の推進方策 |
バソヒビン-1,-2とSVBPを肝細胞に高発現するトランスジェニックマウスの作製を急ぎ、これらのマウスを用いて肝線維化モデルを作製し、バソヒビン-1,-2による肝線維化抑制機構を解析する。また、バソヒビン-1,-2を特異的に認識する抗体を作製できたので肝線維化におけるバソヒビン-1,-2の発現と局在を明らかにする。
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