研究実績の概要 |
P48Cre:KrasG12Dマウスは生後早期からPanIN 病変を呈し、一年以上の経過で膵癌に進展する。このマウスとヒストンメチル化酵素のKOマウスとを交配し膵癌発生進展への過程を検討した結果、ヒストンメチル化酵素Ehmt 欠損マウスでは膵癌前駆病変の進行が遅延することを明らかにした。通常のEhmt存在下では生後早期よりmetaplasia からPanIN 形成を呈し、生後一年までにはPanINが進行、さらに一年以上経過すると膵癌で死亡するマウスが出現、その生存日数中央値は約一年であった。一方でEhmt欠損マウスでは生存日数中央値は602日と、ほぼ通常の野生型マウスと同様であった。組織学的検討により、Ehmt欠損マウスではmetaplasia と早期のPanIN病変は見られるが以降のPanIN病変が形成されないことが明らかとなった。これらのデータはEhmtがマウス膵においてKras遺伝子変異 存在下での腫瘍発生に重要な役割を果たしていることを示唆する。 P48Cre:KrasG12D Ehmt 野生型あるいはEhmt 欠損マウスの膵metaplasia 病変において、Sox9, Mint, Ck19, Amylaseの発現パターンについて、定量的RT-PCRと免疫染色を用いて検討した。またグローバルなヒストン修飾パターンについても検討した。さらにP48Cre:KrasG12D マウスにおけるPanIN 進行は炎症により促進されることから、セルレインを生後6-8週程度のP48Cre:KrasG12D Ehmt 野生型あるいはEhmt 欠損マウスに投与し膵の炎症を誘導した後、PanIN 病変の進行状況を解析した。これによりEhmt が炎症による前癌病変進行に重要な役割を持ちうることを明らかにした。
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