研究実績の概要 |
胆管がんの由来細胞系譜についてはその解剖学的部位ごとに異なる可能性が明らかになったがいまだ不明な点が多い。がんの発生・進展におけるヒストン修飾を介した遺伝子発現制御の重要性が明らかにされているが、いわゆる細胞分化異常の背景としてもエピゲノムを介した遺伝子発現変化は重要な要因と考えられる。様々なヒストン修飾酵素の活性に影響するIDH1,IDH2変異が肝内胆管がんに見られることも胆管発がん機序と分化異常、エピゲノムの関わりを示唆する一例と考えられる。 野生型IDH1(WT)および変異型IDH1(R132C)を組織特異的に発現誘導が可能な遺伝子改変マウスをそれぞれ作製した。具体的にはCAGプロモーター下に Lox-stop-loxを上流に有するそれぞれの遺伝子を組み込んだ発現コンストラクトを構築し、その各々を初期胚に移入して誘導型トランスジェニックマウス(TG マウス)を作製した。このマウスをアルブミンプロモーターの制御下でCreを発現するマウスと交配することで、肝芽細胞系譜で野生型IDH1(WT)および変異型IDH1(R132C)を発現させた。その結果得られるマウスの肝臓につき、組織学的・分子学的解析を行った。具体的には、肝組織の組織学的評価と肝細胞マーカー、胆管細胞マーカーの免疫染色による発現パターン変化の有無を解析した。なお、IDH遺伝子に変異が起こると、α‐KGから新たに2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)が産生されるが、上記の変異型IDH1(R132C)を発現させてマウスにおいてはこの2-HG産生を確認している。さらにマウスの肝臓から胆管細胞の三次元培養を行い、その解析系を用いてIDH変異の意義を解析した。また胆管がんのIDH変異の有無による薬剤感受性の違いについても検討した。
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