研究課題/領域番号 |
16K09392
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石黒 洋 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (90303651)
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研究分担者 |
相馬 義郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (60268183)
山本 明子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (60402385)
洪 繁 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (90402578)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腸管オルガノイド / 嚢胞性線維症 / CFTR |
研究実績の概要 |
1.嚢胞性線維症モデルマウス(ΔFマウス)からの腸管オルガノイドの作成とCFTR依存性腸液分泌の解析 (1)小腸および大腸粘膜からvilli(絨毛)をそぎ落とし、EDTAで処理して、crypt(陰窩)を単離した。(2)単離cryptを、EGF、Noggin、R-spondinとともに、基底膜を主成分とするマトリゲル中で三次元培養すると、腸管オルガノイド(ミニ腸管)が形成され、成長、buddingが始まった。(3)buddingした腸管オルガノイドをメカニカルに分離処理し、継代した。(4)cyst様(内腔に腸液が貯留した状態)になった腸管オルガノイドを、重炭酸緩衝液で潅流し、管腔内への腸液分泌を解析した。(5)小腸由来オルガノイド、大腸由来オルガノイドともに、adenylate cyclaseの刺激剤であるforskolin(10μM)を加えると、腸液分泌速度が増した。(6)ホモ接合体(ΔF/ΔF)マウスからのオルガノイドでは腸液分泌が見られず、ヘテロ接合体(wt/ΔF)オルガノイドの腸液分泌は、コントロール(wt/wt)オルガノイドに比べて腸液分泌が少なかった。(7)このように、in vivoに近い条件で、CFTR機能を評価する系を確立することができた。 2.強制発現系を用いた日本人型変異CFTRの発現特性、Cl-チャネル活性の解析 (1)変異CFTRをCHO細胞に強制発現させ、western blottingによりタンパク発現および成熟化(グリコシル化)を、Patch clamp法(ホールセル電流)によりCl-チャネル機能を、共焦点顕微鏡を用いて細胞膜局在を解析した。(2)T1086Iをはじめとする数種類の変異CFTRは、成熟CFTRの発現が少なく、Cl-チャネル活性がgenisteinにより活性化された。(3)多くの日本人型変異CFTRのタイプ分類が完成しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.マウス大腸由来オルガノイドの腸液分泌の温度依存性 患者の直腸生検組織から腸管オルガノイドを作成して、CFTR依存性の腸液分泌を評価する必要があるため、マウス大腸から腸管オルガノイドを作成した。大腸由来オルガノイドは、小腸由来オルガノイドに比べて腸液分泌能が低く、37℃の環境に保って測定する必要があった。また、オルガノイド作成時にも、Wnt3a、gastrin、nicotinamide、Alk阻害薬、p38阻害薬を加える必要があった。実験条件を最適化するために日数を要した。 2.ヒト正常大腸粘膜からの腸管オルガノイドの作成 上記の理由(1)により始めていない。 その他の研究計画については、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト正常大腸粘膜からの腸管 オルガノイドの作成と患者由来腸管オルガノイドを用いた個別化医療の研究 (1)嚢胞性線維症患者に直腸内視鏡を施行し、直腸から吸引生検(粘膜下層を切離)により粘膜(直径10 mm以下)を採取、cryptを単離し、腸管オルガノイドを樹立する。(2)CFTRタンパク発現およびグリコシル化、細胞膜局在、CFTR依存性腸液分泌機能を解析することにより、各CFTR変異体のin vivoにおける分子病態を明らかにする。(3)強制発現系のデータと併せて、各CFTR変異体のクラス分類を完成させる。(4)患者由来腸管オルガノイドの腸液分泌を測定し、各CFTR変異体のクラス分類に適合した分子治療薬(CFTR potentiator、CFTR corrector)の効果を解析する。(5)溶液分泌に加えて、micropuncture法により、管腔内にpH感受性色素を注入して、CFTR依存性HCO3-分泌を評価する。(4)日本人型CFTR変異体1つ1つについて、クラス分類、表現型(汗中Cl-濃度、便中エラスターゼ測定による膵外分泌機能不全の有無)、分子治療薬への反応性のデータベースを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト大腸粘膜由来オルガノイドの作成を次年度から開始とするため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の配分額と合わせて、腸管オルガノイド培養用マトリゲル、各種増殖因子、培養液などの購入費にあてる計画である。
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