研究課題/領域番号 |
16K09393
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 明子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (60402385)
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研究分担者 |
石黒 洋 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (90303651)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 亜鉛 / 単離膵管 |
研究実績の概要 |
亜鉛は、小腸から吸収され、腸上皮細胞内ではメタロチオネインやアミノ酸と結合し、血中では主にアルブミンと結合した状態で存在し、膵腺房細胞から膵液中に排泄される。亜鉛の欠乏と、亜鉛が集積する臓器である膵臓の内外分泌機能障害が関連することは以前から知られている。 前年度の研究実績の報告書では、モルモット単離膵管を用いて、ヒトの血清亜鉛濃度と同レベルの1~10μmのZn2+が、濃度依存的に、強力に膵導管細胞の水分泌(溶液分泌)を抑制することを報告した。Zn2+が血中ではアルブミンと結合することから、今年度は、膵導管細胞の水分泌に対し亜鉛及びアルブミンが与える影響を検討した。 「方法」モルモットの膵臓より、実体顕微鏡下で鋭利な針を用いて、直径約100 μm、長さ約500μmの小葉間膵管を単離した。 約3時間培養して自然に両端が閉じて内腔に分泌液が貯留した単離膵管を、倒立顕微鏡のステージ上で、37℃でHCO3--CO2緩衝液にて表層灌流した。経時的に明視野像を取得し、管腔内容積の変化から水分泌速度を求め、膵管上皮の単位表面積当たりで表した。 「結果」①0.0005、0.005、0.05 g/dlのアルブミン存在下で、ZnCl2(10μm)を表層灌流液に加えると、水分泌(基礎分泌)速度は各々減少した。0.5 g/dl(ヒトの血中濃度の約1/10)のアルブミン存在下では、ZnCl2(10μm)を加えても水分泌量は変化しなかった。「結論」膵液分泌量は亜鉛とアルブミンの濃度のバランスに影響を受けると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
亜鉛の膵導管細胞の水分泌に与える影響に関する実験は、一定の成果を得られた。また、この膵導管細胞における亜鉛の強い水分泌抑制作用のメカニズムを検討するための細胞内pHや細胞内Ca2+測定の準備や亜鉛トランスポータの発現を検討するためのプライマーの作成などの準備も終了しており、順調に遂行できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
亜鉛による水分泌抑制のメカニズムを明らかにするために、以下の実験を行う予定である。 細胞内pHの測定;水分泌の実験と同様にモルモットの膵臓より直径約100μmの小葉間膵管を単離し、培養すると膵管の両端が閉じる。その膵管を、37℃でHCO3--CO2緩衝液にて表層灌流する。apical membrane上のH+/HCO3-輸送体の活性やCFTR(cAMP依存性Cl-チャネル)に亜鉛が与える影響(亜鉛の水分泌抑制メカニズム)を解析するために、単離膵管の管腔をmicroperfusionして、細胞内pHを測定する。膵導管細胞の細胞内pHは、膵管にBCECF-AMを負荷して測定する。 細胞内カルシウムの測定;細胞内pHの測定と同様に、単離膵管の管腔をmicroperfusionして、lumen側とapical membrane側に亜鉛イオンを負荷し、亜鉛イオンが細胞内Caに与える影響を検討する。膵導管細胞の細胞内Ca測定は、膵管にFura-2を負荷して測定する。
また、上記に加え、膵臓及び膵管からmRNAを抽出し、亜鉛トランポーターのZipやZnTについて膵臓での発現を検討する。
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