研究課題/領域番号 |
16K09396
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田妻 進 広島大学, 病院(医), 教授 (80201614)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 胆管 / 劣化脂質 / 腫瘍性コランギオパチー / ペリオスチン / EMT |
研究実績の概要 |
本研究では高脂肪食に偏る食生活習慣と発がんの因果関係に着目して、高濃度の脂質を含む胆汁に曝露される胆道(胆嚢・胆管)発がんへの変性脂質の関与とSASP因子の役割を検討し、その調節による予防的治療戦略を食生活習慣の観点から提案することを目的として3年間の予定で研究を進めている。 初年度(H28年度)は、①胆道がんおよびそのハイリスク患者の胆汁中におけるペリオスチンの定量を試みるとともに、②胆管上皮細胞における変性脂質による腫瘍性コランギオパチーの誘導を検討した。その結果、胆道疾患におけるペリオスチンの有意な濃度上昇を確認するには至らなかったが、変性脂質による胆道上皮SASP因子発現の増強とそれに伴うEMT誘導が示唆された。胆道がんのハイリスクとなる代表的コランギパチーはHL,PBLと原発性硬化性胆管炎(PSC)である。胆石症は肥満と高脂肪食習慣を危険因子とし慢性炎症を合併してアラキドン酸代謝系賦活と過酸化脂質を増加させる。PBLは膵液の胆汁内逆流PLA2による脂質代謝異常からリゾリン脂質(LPC)と遊離脂肪酸(過酸化脂肪酸を含む)が増加する。胆管上皮は常に胆汁に曝露されていることから、胆管上皮傷害に伴う胆管病変=“コランギオパチー”が惹起される。一方、胆道癌は豊富な線維形成と細胞外マトリックス蛋白=ペリオスチンの高発現を特徴としており上皮間葉転換(EMT)の関与を示唆している。したがって、今回認められた実験成果は、腫瘍性コランギオパチー(PSC、HL、PBM)からの発癌過程におけるペリオスチンの役割としてEMTを介する可能性を改めて示したといえる。 今後は変性脂質曝露による胆道上皮細胞傷害とメカニズム、およびその防御機構の解明と食生活習慣介入による予防的治療戦略立案に向けた追加実験を推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画とほぼ同等の進捗を確認できた。一部、EMTに関しては予定よりやや進展が早く、METについても検討することができそうである。
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今後の研究の推進方策 |
今後はEMTをさらに詳細に検討するとともに、METについても評価を加えて、腫瘍性コランギオパチーの本態を探求して、予防を含めた治療戦略への応用を模索する。 そのプロセスとして、2年目(H29年度)は変性脂質曝露による胆道上皮細胞傷害とメカニズム、およびその防御機構の解明と食生活習慣介入による予防的治療戦略立案に向けた追加実験を推進することとした。
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