研究課題
膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm; IPMN)ではKRAS、GNAS、RNF43遺伝子変異が重複して見られるが、それらの相互作用は明らかでない。我々は膵特異的変異GNAS発現マウスを樹立し、このマウスが変異Krasと協調してヒトIPMNと類似した膵腫瘍を生じることを証明している。このマウスでは変異GNASが細胞内cAMPの上昇を招くが、本来誘導されるはずのアポトーシスが、変異Krasによりキャンセルされ、IPMNを発症することが示唆され、アポトーシスがIPMN発症を強く抑制していると考えられる。本研究では、変異GNAS/KrasマウスによるIPMN発症メカニズム、IPMN発症過程におけるアポトーシスの役割、さらに、変異GNAS、KRASに新規X遺伝子-/-、p53-/-を加えた多重変異マウス、細胞の表現型と信号伝達経路の役割を、in vivo, in vitroの両面から解明しようと試みた。変異GNAS;p53-/-マウスはほぼ正常で、病理学的検索では、変異GNASマウスと顕著な違いは(2ヶ月齢までは)見られなかった。しかし変異GNAS; X-/-マウスでは、膵臓が全体的に腫大し、病理学的解析では、膵内に拡張した膵管の過形成が確認され、IPMNの前状態を表している可能性が示唆された。今後さらに細胞内cAMPの濃度、アポトーシス細胞の数、等で変異GNAS/Krasマウスとの比較を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究においては変異GNAS/Kras;Ptf1a-cre (pancreatic transcription factor 1a; 膵臓特異的cre発現マウス)、変異GNAS;Ptf1a-cre、新規X-/-;変異GNAS;Ptf1a-creマウスなど、二重、三重変異マウスの作出が必要で、その交配に時間を要している。また、腫瘍の形成時期に関して、変異GNAS/Kras;Ptf1a-cre マウスは生後すぐから腫瘍形成が見られ、4-6週齢において、著名な腹水と急性膵炎によって死亡するが、その他のマウスに関してはIPMNの他臓器への浸潤、転移能を見るため、8週から1年程度の長期間の観察が必要であり、時間を要している。
様々な遺伝子改変マウス、培養細胞を用いて、その表現型と信号伝達経路がIPMN発症にどのように影響を及ぼすのか、in vivo, in vitroの両面から解明する。1)IPMN発症過程におけるアポトーシスの役割・・・変異GNASマウスにおいて、p53及びBax/Bak遺伝子を欠失させ、アポトーシスを抑制した場合、細胞内cAMP/PKA 濃度の上昇、IPMNが促進されるのかを明らかにする。また変異KRASによるアポトーシス抑制効果の検討を行う。2) IPMN発症とRnf43に関する研究・・・X遺伝子変異がIPMNに特異的な遺伝子異常であるのか、また発症メカニズムを明らかにするため、X遺伝子-/-と変異GNAS及び変異KRASマウスを用いて、その場合のKRAS、GNAS、X遺伝子変異の相互作用を明らかにする。
pH測定機器の購入が不可欠であったが、本年度の購入額では足りなかったため。
試薬調整用の測定機器を購入するため。
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