研究課題
IPMNではKRAS、GNAS、RNF43変異が重複して見られるが、それらの相互作用は明らかでない。我々は膵特異的変異GNAS発現マウスを樹立し、このマウスは表現型を示さないが、変異Krasとの二重変異マウスでは生後4-5週齢に膵腫瘍、著明な腹水によって死亡することを報告している。この膵腫瘍は病理学的、生化学的解析からヒトIPMNとよく似た特徴を有していたことから、GNASとKRAS遺伝子の異常が協調してヒトIPMNと類似した膵腫瘍を生じることが判明した。このマウスでは変異GNASが細胞内cAMPの上昇を招くが、本来誘導されるはずのアポトーシスが、変異Krasによりキャンセルされ、IPMNを発症することが示唆され、アポトーシスがIPMN発症を強く抑制していると考えられる。本研究課題ではCRISPR/Cas9システムを用いてRNF43遺伝子ノックアウトマウスを作製し、解析を行った。RNF43はE3ユビキチンリガーゼをコードしており、Wntシグナル伝達を負に調節する。RNF43の短縮型変異は、マイクロサテライト不安定性のある腫瘍によく見られることも知られている。RNF43 KOマウスはメンデルの法則に従って、生まれ、その後の成長にも野生型と比較して、差は認めなかった。また膵臓にも病変は認めなかった。つまりRNF43の単独欠損では膵腫瘍の発生には至らないことが判明した。RNF43の体細胞変異が大腸がんおよび子宮内膜がんの18%以上に見られることから(Nat Genet 46, 2014)、アゾキシメタン (AOM)と DSS をマウスに投与し (AOM/DSS マウス)、大腸がん発がんに差が見られるか検討を行った結果、腫瘍の増大を認め、RNF43が大腸がんの進展を抑制する働きがあることが判明した。
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