研究課題/領域番号 |
16K09399
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
小野 道洋 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80634675)
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研究分担者 |
宮西 浩嗣 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (60372819)
菊地 尚平 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80515792)
加藤 淳二 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20244345)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HDAC阻害剤 / エピジェネティクス / 膵癌 |
研究実績の概要 |
まず膵がん細胞株に対して、HDAC class IIa選択的阻害剤TMP269が濃度依存性に細胞増殖抑制効果を有する事をMTTアッセイにより確認した。細胞増殖抑制効果の機序を検討したところ、TMP269ではG1アレストが引き起こされている事が確認された。この結果から、HDAC class II 選択的阻害剤では、アポトーシスではなく、細胞周期抑制を介した 抗腫瘍効果をもたらしている事が示唆された。次に細胞周期抑制の機序を検討したところ、TMP269治療群では、G1周期に関するCDK 2, 4, 6, Cycline D および Eの発現がいずれも低下しており、これらの発現低下によるG1→Sへの移行が抑制された為と考えられた。 さらに、TMP269によるG1周期抑制効果の機序を検討した。膵がん細胞は、多くが、p53の遺伝子変異を有しており、その下流のCD K阻害作用を有するp21の発現が抑制されている。p21について、検討したところ、TMP269により発現の亢進が認められ、HDAC class IIa 阻害によりp21の誘導が細胞増殖抑制効果をもたらしたと考えられた。さらにこの効果は、P53 null細胞株であるAsPC-1 においても認められた事から、この働きがP53非依存的にもたらされている可能性が示唆された。 HDAC class IIa 阻害による細胞増殖抑制効果をより増強させる為、P21のプロテアソーム依存性分解を阻害することを目的として、プロテアソーム阻害剤Carfilzomibを併用したところ、より増強されたP21の発現誘導および細胞増殖抑制効果が認められ、新規治療薬として有望と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単独では腫瘍増殖抑制効果は不十分だったが、プロテアソーム阻害剤との併用によりより増強された細胞増殖抑制効果をもたらすことが示された。
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今後の研究の推進方策 |
カルフィルゾミブとの併用によりTMP269が、P53非依存的にP21誘導を解した細胞増殖抑制効果を確認した。プロテアソーム阻害剤との併用によるP21誘導機序の解析を中心に検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画はほぼ予定通り進行しているが、物品購入が年度をまたいでしまったため次年度使用とさせて頂きます。
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