研究課題/領域番号 |
16K09400
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
宮部 勝之 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00543985)
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研究分担者 |
林 香月 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (00405200)
内藤 格 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30527750)
吉田 道弘 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (20636328)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | FGFR阻害剤 / 胆管癌 / 薬剤抵抗性 |
研究実績の概要 |
線維芽細胞増殖因子レセプター (FGFR)と他のパートナー遺伝子との遺伝子転座が胆道癌にて発見され、これらの転座は機能的に発癌性を有し、分子標的治療のターゲットとして有望であり、臨床試験も開始されているものの、他の薬と同様に治療抵抗性を示す病態の存在が予想される。我々はFGFR 阻害剤の薬剤抵抗性獲得に寄与する機序を解明し、腫瘍発生・進展メカニズムへの影響を検討することとした。最終的には本機序の臨床的意義解明を目的とした。 まずin-vitro実験として、FGFR2-CCDC6 癒合遺伝子を持つ肝内胆管癌primary cell であるLIV31 を使用し、FGFR 阻害薬BGJ398およびPonatinib耐性株を現在作成中である。前回作成を試みたLIV31へのBGJ398投与株は残念ながら死滅してしまったため、今度は極少量のBGJ398およびPonatinibから徐々に濃度を上げて投与していく予定である。 また、in-vivo実験として、Mayo Clinicにてあらかじめ作成されたBGJ398薬剤感受性のpatient-derived xenograft (PDX)とBGJ398薬剤抵抗性のPDX、コントロールとしてvehicleのみ投与されたPDXよりDNAを抽出し、FGFR family geneを中心として遺伝子変異を調べ るgene panel testを実施した結果によると、薬剤投与株では、コントロール群では検出されなかったある遺伝子の変異が検出された。また、現在米国ではPonatinibを胆管癌患者に使用する臨床研究が行われていることもあり、BGJ398だけでなく、Ponatinibの薬剤耐性も調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FGFR2-CCDC6 癒合遺伝子を持つ肝内胆管癌primary cellであるLIV31を使用し、FGFR 阻害剤耐性細胞株を昨年より作成しているが、本細胞は成長が極めて遅く、薬剤耐性細胞株を作成するのに予想外に時間がかかっている。前回作成を試みたLIV31へのBGJ398投与株は残念ながら死滅してしまったため、今度は極少量のBGJ398およびPonatinibから徐々に濃度を上げて投与していく予定である。しかしながら、Mayo Clinicにて前研究者が作成したBGJ398薬剤耐性獲得PDXを使用することができたため、コストと時間を削減することができた。まずはこれらのPDXを用いてさらなる分析を行うとともに、その結果をin vitroおよびin vivo実験で証明するためのLIV31耐性株を作成することに集中する。
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今後の研究の推進方策 |
Mayo Clinicにて行われた遺伝子パネルでは予想しない遺伝子変異が検出された。本解析は、BGJ398投与群9例、およびPonatinib投与群6例では約半数に同一の遺伝子変異を認めたが、FGFR阻害剤を投与していないコントロール群4例ではいずれの症例でも認めなかった。本遺伝子は発現低下が大腸癌などど関連しているとされており、遺伝子変異が発現低下に関与している可能性があり、残存する標本や細胞株を用いてさらなる解析を進めていく予定である。また、今回の遺伝子パネルは主に遺伝子変異などを検出する研究室独自のパネルであったため、次はさらに多くの遺伝子のcopy number variationアッセイを行う予定である。 これと同時に、LIV31の薬剤耐性株を作成し、可能であれば正常胆管細胞株にFGFR2-CCDC6癒合遺伝子をレンチウイルスにてトランスフェクションを行い安定細胞株を作成し、そちらでも薬剤耐性株を作成することを試みる予定である。LIV31はまた、他のoncogeneが多く発現しているため、その遺伝子と薬剤耐性との関連も調べる必要があり、またFGF19/FGFR4シグナルが他のsmall molecular agent薬剤耐性と関連があるとの報告もあるため、検討に値すると思われる。薬剤耐性株ができ次第、ヌードマウスに皮下注することでxenograftを作成し、in vivoの検討も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度および今年度、FGFR阻害剤を用いた薬剤耐性獲得細胞株の作成に予想外に時間がかかった(6ヶ月以上)上、Mayo Clinicの共同研究者Dr. Lewis R. Robertsと話し合った結果、まずはMayo Clinicにて過去に作成したFGFR阻害剤耐性獲得PDXを使用し、50 gene panelにて遺伝子変異の比較を行おうということになったため、まだマウス実験やRNAシークエンスに使用する予定の費用を使用していないため。本年度copy number variationを解析する予定であり、その出費として算出する予定である。
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