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2017 年度 実施状況報告書

急性膵炎におけるカルシウム結合蛋白の役割ー新たな創薬を目指して

研究課題

研究課題/領域番号 16K09401
研究機関自治医科大学

研究代表者

眞嶋 浩聡  自治医科大学, 医学部, 教授 (10261869)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード急性膵炎 / S100g / 細胞内カルシウム / トリプシン
研究実績の概要

S100gノックアウト(KO)マウスは韓国Chungbuk National UniversityのEui-Bae Jeung教授から供与して頂き、秋田大学から移送して解析を行った。S100gは主に十二指腸に発現しているタンパクである。既報の如く、生理条件下では生育に異常を呈さず、繁殖にも問題はみられなかった。mRNAレベルでは膵臓にも発現しているが、免疫組織化学では生理条件下において膵臓に発現はみられなかったが、実験的急性膵炎を惹起すると発現が認められるようになった。つまり、急性膵炎反応によって膵臓に発現が誘導された。生理条件下ではS100g KOマウスの膵臓にマクロ的にもミクロ的にも異常はみられなかった。単離腺房を用いてコレシストキニン刺激によるアミラーゼ分泌をみても大きな差はみられなかった。コントロールマウス、S100g KOマウスにコレシストキニンのアナログであるセルレインを複数回投与して実験的膵炎を惹起して比較検討すると、膵炎反応は組織学的(浮腫、壊死、出血、炎症細胞浸潤からなるスコアの総計)にS100g KOマウスで軽減した。血清アミラーゼの上昇に差はみられなかったが、膵組織中のトリプシン活性はS100g KOマウスでは低下していた。つまり、トリプシンの膵内での異所性活性化が抑制されたために膵炎反応が軽減した可能性が示唆された。S100gはカルシウム結合蛋白であることから、セルレイン刺激に対する細胞内カルシウム濃度[Ca2+]の上昇に変化が生じ、そのために膵炎が軽減した可能性が示唆された。次年度はS100gと[Ca2+]の関係を分子レベルで解明することが大きな目標である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度の検討によると、膵腺房細胞株AR42JにS100gを過剰発現した細胞(AR42J-S100g)ではコレシストキニン刺激による細胞内カルシウム濃度[Ca2+]の上昇は抑制された。また、コレシストキニン刺激によるアミラーゼ分泌も抑制された。S100gがカルシウム結合蛋白であることを考えると、この結果は合理的である。これから類推するとS100g KOマウスの膵腺房細胞ではコレシストキニン刺激によって[Ca2+]はコントロールマウスより上昇し、アミラーゼ分泌は増強すると予想される。しかし、単離腺房の刺激実験ではアミラーゼ分泌に大きな差はみられなかった。また、一般的に[Ca2+]の過剰な上昇は細胞障害性に働くとされており、これはS100g KOマウスで膵炎が軽減する結果を支持しない。従って、今後はこれらの矛盾を解決すべく、単離腺房細胞を使用して、アミラーゼ分泌、トリプシンの活性化、[Ca2+]の変化を詳細に検討し、S100gKOマウスで膵炎が軽減する分子メカニズムの解明が焦点となる。
秋田大学からマウスを移送して実験を始めたが、学内の承認に時間がかかり、マウスの移送が遅くなってしまったために、やや実験の進行が遅れている。マウスも順調に増えてきたために今年度のペースアップが可能であり、当初の目標を十分達成できると考えている。

今後の研究の推進方策

①セルレイン膵炎:セルレインを腹腔内に7-12回ipすることによって作成するが、このマウスでは7回ipでは差が出にくい傾向にある。12回ipによる実験を繰り返し、結果をconfirmする。
②単離腺房を利用した実験:a.コレシストキニンによるアミラーゼ分泌実験、b.コレシストキニン刺激によるトリプシンの活性化の差異の検討、c.コレシストキニン刺激による[Ca2+]上昇の差異の検討
③単離腺房細胞は長期間の培養は困難であるが、12時間程度の培養は可能であり、アデノウイルスシステムを用いて遺伝子導入を図ることも可能である。S100gKOマウスからの腺房細胞にS100gを発現させ、②でみられた異常がレスキューされるかどうかを確かめる。これを示すことができれば、結果がよりconfirmされる。
以上の結果を通じて、急性膵炎反応におけるS100g蛋白の役割を明らかにし、急性膵炎治療に対する新しい治療介入が可能であるかどうかを検討する。

次年度使用額が生じた理由

(理由)少額であり、使用しきれなかった。
(使用計画)消耗品代として使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 急性膵炎におけるオートファジーとエンドサイトーシス2018

    • 著者名/発表者名
      眞嶋浩聡、高橋健一、大西洋英
    • 雑誌名

      胆と膵

      巻: 39 ページ: 139-145

  • [雑誌論文] Disruption of Small GTPase Rab7 Exacerbates the Severity of Acute Pancreatitis in Experimental Mouse Models2017

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Kenichi、Mashima Hirosato、Miura Kouichi、Maeda Daichi、Goto Akiteru、Goto Takashi、Sun-Wada Ge-Hong、Wada Yoh、Ohnishi Hirohide
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 7 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-017-02988-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 膵臓特異的Rab7ノックアウトマウスによるオートファジー成熟過程の障害はセルレイン誘発急性膵炎を悪化させる2017

    • 著者名/発表者名
      高橋健一、眞嶋浩聡、大西洋英
    • 学会等名
      第104回日本消化器病学会総会
  • [学会発表] Rab7のオートファジー・エンドサイトーシスを介した急性膵炎での保護的作用の検討2017

    • 著者名/発表者名
      高橋健一、眞嶋浩聡、大西洋英
    • 学会等名
      第48回日本膵臓学会大会

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公開日: 2018-12-17  

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