術不能膵がん症例の予後改善のためには、「既存の化学療法の改良」と「新規治療の開発」が過大であり、膵癌オルガノイドを用いて、既存の化学療法への効果予測、新規治療法の有効性評価や治療標的の探索など膵癌の橋渡し研究を強力に推進することを本研究の目的とし、本研究を開始した。EUS-FNAにて採取した生検検体に対して個別にオルガノイド培養を行い膵がん生検由来微量検体をオルガノイド培養により大量に増幅することが可能であった。年間症例数は、対象症例の同意が得られず年間10-20例ほどにとどまった。また、EUS-FNAからは腸管や膵臓の正常細胞、血球細胞、間質細胞等の混入も予想されたが、血清を使用しないため間質細胞はほとんどが死滅し、癌細胞優位な状態で培養することが可能であった。得られた細胞からは、80%の確率でPDXの作成が可能であり、生検検体由来細胞のみならず、皮下腫瘍からも再度細胞を採取し、薬剤感受性試験を始めとした各種解析が可能であった。皮下腫瘍を形成した細胞に関しては、異型腺管を形成し、膵癌として矛盾しない腫瘍を認めていた。遺伝子解析ではKRASの変異を認めており、検体中のkras変異は、皮下腫瘍を形成させることで、変異を有する細胞の割合は上昇しており、腫瘍のみが形成されていることが示された。 ただし、培養自体の成功率は20%程度にとどまったため、検体の採取経路を生検だけでなく胆汁検体などの余剰検体も用いて行うことで、膵癌の症例数を増やすことに努めた。 薬剤感受性試験に関しては、臨床に用いている抗がん剤を使用し、実際の患者での効果との比較検討を行った。薬剤感受性に関しては、臨床経過との相関がみられており、実験系の精度を上げるという課題は残されるが、将来的には得られた細胞を用いることで、非侵襲的にドラッグスクリーニングも可能と考えられた。
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