研究課題/領域番号 |
16K09408
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
宮本 弘志 徳島大学, 大学病院, 講師 (90398024)
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研究分担者 |
高山 哲治 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (10284994)
岡本 耕一 徳島大学, 病院, 講師 (60531374)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膵癌 / 超音波内視鏡下穿刺吸引術 / 肝転移 / マイクロRNA |
研究実績の概要 |
1.膵癌患者において肝転移に関わるマイクロRNAをこれまでマイクロRNAアレイを行い4個同定している。この4個のマイクロRNAについて、病理学的に膵管癌と診断された患者のホルマリン固定後サンプルを用いて、肝転移の有無別に15例ずつTaqman miRNAアッセイによりvalidationを行った。4個のマイクロRNAのうち3個は発現亢進、1個は低下していることが確認された。 2.膵癌細胞株を用いた実験として、HPAF-II、PANC-1、PL45の3種類の細胞株を用い、上記でvalidationされたマイクロRNA において、発現亢進のマイクロRNAについては、siRNA、発現低下のマイクロRNAにはmimicを投与し、マイグレイションアッセイ、インベイジョンアッセイ を行った。遊走能、浸潤能に影響を与えるマイクロRNAを同定した。 3.膵癌細胞株のエクスプレッションアッセイを用いて、遺伝子発現解析を施行した。IPA解析およびターゲットスキャンのデータベースを用いて、膵癌細胞株の発現より絞った2つのmiRNAのうち、それぞれ上位2つずつ標的遺伝子を選択した。 4。次に膵癌細胞株を用いて、miRNA過剰発現を行い、それぞれの標的遺伝子発現を検討した。その結果1つの遺伝子のみmiRNA過剰発現により発現の低下を認めた。さらにRT-PCR、WBでも標的遺伝子の発現低下を確認することができた。 5.次に一つに絞られた遺伝子をノックダウンさせ、膵癌細胞株の浸潤能が増強されることを確認した。また、miRNAを過剰発現させても浸潤能の増強されることを確認した。浸潤能の増強の原因を検索するために、miRNA過剰発現時の上皮間葉転換(EMT)を調べたところ、EMTの増強が確認された。さらに増殖能、アポトーシスについても検討したが、miRNA過剰発現によりアポトーシスの抑制が起こっているが、増殖能には影響しないことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵癌ホルマリン固定後検体を用いたマイクロRNAのvalidationについては、当初の予定通り終了し、4個のマイクロRNAがそれぞれ発現亢進、低下していることを確かめることができた。しかし、膵癌細胞株を用いたマイクロRNAによる遊走・浸潤能に対する影響の検討については、3種類のすべての細胞株について実験が終了した。エクスプレッションアッセイおよびIPA解析等によるターゲット遺伝子の検索については、膵癌細胞株の発現から2つに絞ったmiRNAについて、上位2つの標的遺伝子を絞り込んだ。膵癌細胞株でmiRNAを過剰発現させ、標的遺伝子の発現低下を検討し、1つの遺伝子について発現が低下することを確認した。また、同遺伝子のReal Time PCR、WB による発現低下を確認した。さらに、絞られた遺伝子のノックダウン実験を行い、膵癌細胞株の浸潤能が増強されることを確認した。また、miRNAを過剰発現させても浸潤能の増強されることを確認した。浸潤能の増強の原因を検索するために、miRNA過剰発現時の上皮間葉転換(EMT)を調べたところ、EMTの増強が確認された。さらに増殖能、アポトーシスについても検討したが、miRNA過剰発現によりアポトーシスの抑制が起こっているが、増殖能は変化ないことが確認された。したがって、平成29年度の進捗状況としては、in vitroでの実験は当初予定していた実験にさらに肝転移の機序について解析を行い、機序を明らかにすることができた。しかし、動物実験はまだ手つかずであり、さらに臨床検体用いた検討はこれからと遅れている。残りの期間で標的遺伝子についての検討をさらに進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今回1つに絞り込まれた膵癌肝転移に関わる遺伝子のノックアウト 株の細胞特性のin vitro 評価を行う。次にマウスを用いた動物実験を行い、ノックアウト膵癌細胞 株を用いて、実際に肝転移について検討する。さらに、膵癌患者から得られた組織を用い、マイクロRNA、ターゲット遺伝子および蛋白のin situ hybridizationおよび免疫組織染色を行い、発現を検証する。以上の検証で証明されたマイクロRNA、ターゲット遺伝子について、膵癌肝転移予測に対する感度、特異度からROC曲線を用いた解析を行い、新規血清バイオマーカーの確立を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験が遅れており、その分の経費による。次年度以降、動物実験さらには、免疫染色等も行う予定である。
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