研究課題
本研究では、超音波内視鏡の新規技術を開発し、膵癌に対する早期診断・治療に応用することを目的としている。平成29年度は以下の研究を実施した。1.新規超音波内視鏡画像診断技術の開発:膵腫瘍性病変に対して造影超音波内視鏡を用いた血行動態の定量的評価を行った。膵癌は他の腫瘍性病変と異なったパターンを呈し、60秒後の信号を用いた場合、最も診断精度が優れていることが証明された(Oncology 2017)。2.超音波内視鏡下穿刺の検体採取における分子生物学的解析による膵癌予後予測におけるバイオマーカーの探索:膵癌生検組織におけるAkt2発現の有無で治療効果予測が可能かどうか検討した。Akt2発現膵癌症例の方がゲムシタビンとEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の併用した化学療法の治療効果・予後が悪い傾向にあり、Akt2発現がEGFRチロシンキナーゼ阻害薬抵抗性を予測するバイオマーカーとなりうることを報告した(Int J Oncol 2017)。3.新規超音波内視鏡下治療法の前臨床研究および臨床研究:前臨床研究では、拡張操作を兼ねた細径デリバリーシステムを搭載したカバー型金属ステントを開発し、ファントム実験および動物実験で拡張操作を行わず超音波内視鏡下胆管ドレナージ術が行えることを報告した(J Med Ultrason 2017)。臨床研究では、ERCPが不成功であった良性・切除可能胆管閉塞症例に対して、超音波内視鏡下ランデブー法を用いた胆道カニュレーションを行い、同手技が有効であり安全な手技であることを報告した(Dig Dis Sci 2018)。十二指腸閉塞対して胃十二指腸ステントが留置された膵癌患者の閉塞性黄疸出現時には、通常のERCPを用いた胆道ドレナージよりも超音波内視鏡下胆管ドレナージの方が有意に手技成功率が高いことを報告した(Gastrointest Endosc 2018)。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度の計画では、前臨床研究と臨床研究を並行して実施することとなっていたが、両研究ともに予定通りに成果が得られ、逐次、論文発表を行っている。
平成30年度も平成29年度と同様、前臨床研究と臨床研究を並行して行っていく予定である。前臨床試験では、平成29年度より「肝転移巣に対する超音波内視鏡下ラジオ波焼灼術の前臨床研究」を実施しているが平成30年度も継続中である。臨床試験では、平成29年度に終了した「ERCP 不成功の遠位胆管閉塞に対する超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージの最適アプローチルートを検討する臨床試験」は現在論文投稿準備中である。平成29年度より、「造影ハーモニック超音波内視鏡におけるKupffer イメージングによる膵癌微小肝転移診断の有用性を検討する臨床試験」、「膵腫瘍性病変に対する造影下EUS-FNA の有用性を検討する臨床試験」、「拡張操作を兼ねた細径デリバリーシステムを搭載したカバー型金属ステントを用いた超音波内視鏡下胆管ドレナージ術の有用性と安全性を検討する臨床試験」の3臨床研究が進行中であるが、平成30年度中にデータ解析を行い、成果発表する予定である。
平成30年度に行う実験の費用として割り当てる必要があったため
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 図書 (1件)
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