研究課題
本研究は膵腫瘍または膵嚢胞性腫瘍の疑いで超音波内視鏡下穿刺術(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration; EUS-FNA)を実施する症例の血液および嚢胞液から単離したエクソソームのプロテオーム解析を行い、エクソソームで発現変化を示すタンパクを同定した後に、多数の患者検体を用いてその疾患特異性を確認する。さらに、ヒト膵臓癌細胞を用いた実験により、エクソソームで発現変化を示したタンパクが細胞内で増殖、浸潤能、転移能等に及ぼす影響を明らかにし、患者の血液・嚢胞液を用いた膵腫瘍・膵嚢胞性腫瘍のエクソソーム診断を目指している。本年度は以下のことを行った。【①検体採取と保存】 当院において膵腫瘍または膵嚢胞性腫瘍が疑われた症例に対しEUS-FNAを施行し、33検体を採取し保存を行った。【②不死化正常膵管上皮細胞と膵臓癌細胞エクソソームの定量プロテオーム解析】不死化正常膵管上皮細胞(H6C7)と3種の膵臓癌細胞(PANC-1、PK-1、KLM-1)の培養上清から超遠心法によりエクソソームを精製した。精製したエクソソームをiTRAQ標識による定量プロテオーム解析を行い、約1000個のタンパク質を同定した。同定したタンパク質の中より不死化正常膵管上皮細胞と比較して癌細胞で発現が変化するタンパク質を選定し、エクソソーム上のマーカー候補とした。
2: おおむね順調に進展している
検体の採取については現在までに前年度から合計33検体を採取し、凍結保存している。エクソソームの解析については不死化正常膵管上皮細胞および膵癌細胞の培養上清から超遠心法によりエクソソームを精製し、プロテオーム解析を行うことでエクソソーム上の標的タンパク質の候補を得ている。以上のことからおおむね順調に進展していると考えた。
プロテオーム解析で得た候補タンパク質について培養細胞由来エクソソームのウエスタンブロットによる発現の確認を進めるとともに、患者血清や嚢胞液での測定が可能であるか検討を行う。また、血清・嚢胞液中よりエクソソームを単離してプロテオーム解析することも進めていく。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件)
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