研究課題/領域番号 |
16K09413
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 潤 東北大学, 大学病院, 講師 (00375081)
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研究分担者 |
下川 宏明 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00235681)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 冠微小循環障害 / 冠攣縮 / 狭心症 |
研究実績の概要 |
本研究に組み込まれた症例が含まれる174名の冠攣縮性狭心症(VSA)患者において末梢血白血球中Rhoキナーゼ活性を測定した。末梢血白血球中Rhoキナーゼ活性はVSAの診断マーカーかつ病勢を反映するバイオマーカーとして知られており、本研究課題のメインテーマである冠微小循環にも大きな影響を与えるバイオマーカーである。しかしながらVSA患者において、末梢血白血球中Rhoキナーゼ活性の長期予後予測能についてはいまだ明らかではない。そこで本研究に組み入れたVSA症例174名を中央値16か月追跡し末梢血白血球中Rhoキナーゼ活性と長期予後の関係を検討した。VSA患者の診断時Rhoキナーゼ活性は非VSA患者と比較し有意に高く、診断時のRhoキナーゼ活性が高値のVSA患者群では、Rhoキナーゼ活性が低値のVSA群や非VSA群と比較し、経過観察中に冠攣縮発作による不安定狭心症や、心臓死がより高率に発生していた。さらに、近年報告されたVSAの包括的なリスクスコア(JCSAリスクスコア)に末梢血白血球Rhoキナーゼ活性値を組み合わせることで、VSA患者の予後がより詳細に層別化できることが分かった。H29年度にこの成果を論文化しEuropean Heart Journal誌に採択された。 本研究成果は、末梢血白血球Rhoキナーゼ活性がVSA患者の長期予後のバイオマーカーになることを世界で初めて明らかにした重要な報告といえる。新たな長期予後指標の発見によって診断時点で長期予後不良患者を選別することが可能となり、それらハイリスク患者・難治性冠攣縮における治療戦略の改善につながる事が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は血漿セロトニン濃度が冠微小循環障害の新たなバイオマーカーであることを明らかにし、今年度は冠微小循環機能を反映するRhoキナーゼ活性が冠攣縮性狭心症患者の長期予後予測を可能とするバイオマーカーであることを世界で初めて報告した。いずれの知見も一流誌であるEuropean Heart Journal(IF20.2)に採択され、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、冠攣縮誘発試験施行症例を本研究に組み入れることを継続して行い、今後特に冠微小循環の拡張性機能異常についてIMRやCFRといった指標を用いて明らかにしていきたい。また、それら拡張性指標と血漿セロトニン濃度や末梢血白血球中Rhoキナーゼ活性といった冠微小循環障害を反映するバイオマーカーとの相関を検討する。さらに、冠攣縮誘発試験陽性例においては全例でカルシウム拮抗薬ベニジピンを服用させ、死亡・心筋梗塞の発症・心不全や狭心症の増悪による入院といった主要心血管イベントの有無を確認する共に、シアトル狭心症質問票によるクオリティオブライフ評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費より、ソフトウェア等の購入を検討していたが購入を行わなかった。次年度は、海外学会および国内学会での発表を複数回予定しており、繰り越し分と併せて旅費として執行する予定である。
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