研究課題
本研究に組み込まれた症例が含まれる胸痛または虚血性心電図変化を有する非閉塞性冠動脈疾患患者187名を対象として冠動脈機能を包括的に評価し、冠動脈収縮・拡張機能異常の有無が予後に及ぼす影響を検討した。128名(68%)がアセチルコリン負荷試験により冠攣縮性狭心症 (vasospastic angina: VSA)と診断された。CFR (coronary flow reserve、冠血流予備能比)とIMR (index of microcirculatory resistance、微小血管抵抗指数)によって表される冠動脈拡張機能の比較において、VSA群と非VSA群の間でCFR値はほぼ同等であったが、IMR値はVSA群において有意に高値であった (17.5(12.0 23.3) vs .14.7(11.0 17.8), P<0.05)。またCFR低値(<2.0)とIMR高値 (>20)を合併する高度な冠動脈拡張機能障害とVSAの併存は、慢性期の心血管イベント発生と有意に関連しており、心表面冠動脈と冠微小血管機能異常の合併が非閉塞性冠動脈疾患患者の長期予後不良と関連することが明らかになった。さらにRho-kinase阻害薬であるファスジルの冠動脈内投与により、特に心血管イベントが高率であった冠動脈拡張障害とVSAの合併群においてCFR値、IMR値は有意に改善し、冠動脈機能異常における共通した機序としてRho-kinase経路の関与が示唆された。本研究は非閉塞性冠動脈疾患患者において心表面冠攣縮と冠動脈拡張機能障害の合併は慢性期予後不良と相関し、その機序としてRho-kinase活性が関与している可能性を示唆した世界で初めての研究と言える。本研究成果は研究協力者である大学院生の須田彬がヨーロッパ心臓病学会で発表し、現在論文投稿中である。今後セロトニンとの関連を検討予定である。
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