研究課題
本研究の目的は、侵襲的血行動態検査およびマルチバイオマーカーの計測を行い、慢性心不全および肺高血圧症に合併する多臓器障害との連関を慢性循環不全の観点から捉え、その病態、発症、進展過程を解明することである。また心疾患治療介入による多臓器障害の予防、進展抑制、予後に与える影響の検討も行うことで、最終的に心不全患者の治療成績の向上につなげることを目的とする。後向きの研究に関し、バイオマーカーとしてCyclophilin A(CyPA)に着目し、冠動脈疾患間患者連続511名の血性CyA値と予後イベントの関連を調査した。CyA高値群は低値群と比較して有意に総死亡、再入院率、冠動脈再血行再建率が高いこと、CyAと高感度CRPを組み合わせることで、総死亡の予測能がそれぞれを単独で用いた場合と比較して、更に向上することを明らかとし、Arterioscler Thromb Vasc Biol誌へ報告した。一方、前向き観察研究として、2016年度は特に先天性心疾患患者を対象として研究計画書を作成、倫理委員会の承認をえた。その後11月よりリクルートを行い、2017年3月末時点で、約140名の成人先天性心疾患患者の登録を行い、内80名でQOL関連のアンケート調査を実施した。また先天性心疾患を対象とした後向き研究として、第2次東北慢性心不全研究に登録された成人先天性心疾患患者の解析を行った。成人先天性心疾患患者は、対照の後天性心疾患患者よりも、平均年齢で約10歳若い集団であったが、慢性心不全の進展と関連する高血圧、糖尿病、脂質異常症、貧血、慢性腎臓病などの合併が稀ではないことを明らかとした。こらの知見は、2017年1月の日本成人先天性心疾患学術集会および3月の日本循環器学会学術集会において発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究対象となる慢性心不全、肺循環障害、成人先天性心疾患患者は、当研究機関が移植医療を含めた地域のセンター病院であることから、紹介が多い。
引き続き、積極的に対象患者のリクルート活動を関連施設に働きかける。また学会、研究会、論文作成も積極的に行い、認識を高める努力を行う。紹介された患者に関しては、フォローアップデータの取り忘れないように共同研究者、他科医師、照会先などとの連絡を密にしてゆく。
本年度は、本研究のデータの収集時期であり、結果発表を行う学会出張、特に海外学会での発表が予定よりも少なく済んだことによる。
次年度は、データ収集が進み、中間解析などの結果を学会発表する。特に海外での発表を積極的に行い、論文化もすすめてゆく。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Arterioscler Thromb Vasc Biol
巻: 37 ページ: 685-693
10.1161/ATVBAHA.116.308986