研究課題
本研究の目的は、侵襲的血行動態検査およびマルチバイオマーカーの計測を行い、慢性心不全および肺高血圧症に合併する多臓器障害との連関を慢性循環不全の観点から捉え、その病態、発症、進展過程を解明することである。また心疾患治療介入による多臓器障害の予防、進展抑制、予後に与える影響の検討も行うことで、最終的に心不全患者の治療成績の向上につなげることを目的とする。1. C型肝炎ウイルス感染(HCV)と成人先天性心疾患患者(ACHD)の予後の調査を行った。1992年以前に心内修復術を受けたACHD患者のHCV感染率は20%で、遠隔期の体心室機能低下や心血管予後の悪化と関連していた。この結果は2017年アメリカ心臓病学会にて報告した。2. 冠動脈疾患間患者連続372名の血性アディプシン値と予後イベントの関連を調査した。その結果、アディプシン高値群は低値群と比較して有意に総死亡、再入院率、冠動脈再血行再建率が高かった。更に、血清アディプシン値と高感度CRPを組み合わせ他場合、総死亡の予測能がそれぞれを単独で用いた場合より、有意に向上することを証明した。この結果は、第82回日本循環器学会学術集会にて報告した。3. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)のバイオマーカーとしてサクロフィリンA(CyPA)に着目し、連続39名のCTEPH患者の血漿CyPAとBNP濃度をバルーン肺動脈拡張術前後(BPA)で測定した。CTEPH患者の血漿CyPA濃度は疾患コントロール(肺塞栓あるいは深部静脈血栓症の既往)あるいは健常コントロールと比較して有意に高値であった。また平均肺動脈圧および肺血管抵抗値に相関していた。更にBPA後でCyPA濃度は有意に減少したが、BNPに有意差は認められなかった。この結果は、2017年11月のアメリカ心臓病学会で報告した。
2: おおむね順調に進展している
研究対象となる慢性心不全、肺循環障害、成人先天性心疾患患者は、当研究機関が移植医療を含めた地域のセンター病院であることから、紹介が多い。いくつかのバイオマーカーでは、予後予測が可能である結果が得られ、学会報告を既に行っている。
本年度も継続して、対象患者の積極的なリクルート活動を関連施設に働きかける。また学会、研究会、論文作成も積極的に行う。紹介された患者に関しては、フォローアップデータの取り忘れないように共同研究者、他科医師、照会先など連絡を密にしてゆく。
当初予定よりも学会参加機会が少なかったため。次年度は、海外学会および国内学会での発表を複数回予定しており、繰り越し分と併せて執行する。
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