研究課題/領域番号 |
16K09415
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
渡邊 博之 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80323145)
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研究分担者 |
伊藤 宏 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10232464)
飯野 健二 秋田大学, 医学部, 講師 (30400485)
飯野 貴子 秋田大学, 医学部, 助教 (70620871)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腎移植 / 尿毒症性心筋症 / 末期腎不全 |
研究実績の概要 |
本研究では、腎移植後心機能改善例の特性を分析することにより尿毒症性心筋症の治療標的を抽出、新規心不全治療の開発を目指す。本年度の具体的研究項目は、以下の2つである。1) 末期腎不全患者を透析継続群と腎移植群に分け、心機能に影響を与えうる種々の因子を移植後1-2年間経時的に観察、心機能回復の影響因子を抽出する。2) 腎移植群を移植後12か月の時点で心機能改善例 (responder) と心機能非改善例 (non-responder) に分類し、それらの比較から治療反応性尿毒症性心筋症の特性を同定する。1)に対しては、この1-2年間の観察から透析継続群に比べ腎移植群のほうが、有意に左室容積、左室重量、左室駆出率の改善があったことを証明した。特にその傾向は心機能低下例で顕著であった。また、腎移植群でヘモグロビン値、収縮期血圧値、血圧変動パラメーターの改善傾向がみられ、それらが心機能回復の影響因子になるのではと推測、今後より詳細に検討知っていく予定である。また、2)に関する検討でも、ヘモグロビン値、収縮期血圧値、MIBG心筋シンチを用いた評価した交感神経活性の改善が、心機能回復の影響因子候補となることが分かった。ただし、当初の予想と異なり、血管内皮機能、動脈硬化指標には透析継続群と腎移植群間さらにresponderとnon-responder間に有意な違いはまだ検出されていない。さらに、MRI T1マッピング法による心筋線維化と尿毒症性心筋症の関連については、検査施行上の問題から有効なデータをとれていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
透析継続群と腎移植群の比較において、心機能検査を含め評価項目の多くは検討できているため、おおむね順調に進展していると考える。ただし、以下に示す項目で研究の滞りがあり、今後の検討を要する。(1)MRI T1マッピング法による心筋線維化と尿毒症性心筋症の関連について、T1マッピング法による検査に習熟しておらず有効なデータをとれていない。(2)renalase の測定が信頼性のあるデータがでていない (3)昨年度の腎移植件数が予想より少なかった。 今後これらの点の改善に努める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
経過観察期間が24か月のため、29年度は28年度の研究内容を継続するかたわら、さらに集まったデータ(術後影響因子の観察)から、腎移植後心機能改善の影響因子を抽出する。これまで検討した評価項目に加え、ホルタ―ECGでの交感神経指標、uremic toxin の測定なども評価項目に加え研究を進めていく。また腎移植群、透析継続群それぞれにおいて、大動脈弁狭窄症の進行や冠動脈疾患発生に関しても、その経過、頻度、影響因子について研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
内分泌学的検査項目(副甲状腺ホルモン、renalase、Ca/P, renin, d-rom などの酸化ストレスマーカー、uremic toxins)の測定が、検査手技上の問題などもあって、予想よりも進展していないため、その測定費用分が次年度に回り、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
検査手技などの問題を解決したうえで、副甲状腺ホルモン、renalase、Ca/P, renin, d-rom などの酸化ストレスマーカー、uremic toxins の測定費用として、次年度使用する予定である。
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