研究課題/領域番号 |
16K09422
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
尾崎 和幸 新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60758366)
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研究分担者 |
南野 徹 新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90328063)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 臨床心臓学 |
研究実績の概要 |
心肺血管疾患における代謝リモデリングは未知の事象が多く存在し、臨床データはほぼ皆無である。本研究では、網羅的代謝物質解析技術(メタボロミクス)を用い、臨床的指標と比較検討することにより、心肺血管疾患患者における代謝リモデリングの解明を目指す。それにより、心肺血管疾患の発症と進展に関与する未知の代謝メカニズムを明らかにし、新たな病態解明、それらを標的とする新しい治療戦略の基盤の構築、病状把握のためのバイオマーカーを確立する。また、その結果を基礎研究へ還元することにより、より深い病態解明につなげることを目標とする。 対象は心肺血管疾患を有し、待機的な心血管カテーテル検査の適応がある患者100例とする。通常の心血管カテーテル検査を施行し、その際に計4ヵ所から血液検体を採取、後日にこれらの検体を用いてメタボローム解析を行う。心血管カテーテル検査後に原疾患に対して必要に応じて治療介入を行い、6ヶ月および12ヶ月後に上記臨床検査による追跡調査を施行する。再度心血管カテーテル検査が必要と判断された患者は、メタボローム解析を再度施行する。メタボロミクスの解析結果と臨床的パラメーターとの相関を検討し、疾患や病態との関連が強い代謝産物を同定する。平行して心肺血管疾患マウスモデルを用いたメタボローム解析も行い、ヒトで得られたデータのバリデーションを行うとともに、マウスモデルにおいても疾患・病態特異的代謝産物の同定を試みる。疾患や病態と相関がありそうな代謝産物を明らかにし、その代謝経路に重要な酵素や関連分子の組織特異的遺伝子欠失マウスを作製することによって、候補となった代謝産物の病態生理学的な役割を明らかにする。 現在まで、約70例の心肺血管疾患患者に対してメタボローム解析を施行するための検体採取を心血管カテーテル検査の際に施行した。順次、メタボローム解析を開始している状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始より現在まで、合計76名の心肺血管疾患患者に対してメタボローム解析を施行するための検体採取を心血管カテーテル検査の際に施行した。内訳は、非虚血心疾患が20名(特発性拡張型心筋症が10名、肥大型心筋症が6名、高血圧性心疾患が2名、心サルコイドーシスが2名)、虚血性心疾患が25名(駆出率35%以上が17名、35%未満が8名)、心臓弁膜症が4例、肺高血圧症が5名、その他が22名である。順次、メタボローム解析を開始し、30名で初回の解析結果が判明した。現状では解析症例が少なく、一定の結果を見出せてはいないが、いくつかの代謝産物には注目している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、目標症例数までメタボローム解析を施行する。また、対象となった患者の追跡調査を計画通りに施行し、病状、心機能の変化等、臨床的パラメーターの変化と相関のある代謝産物を同定する。再度、心血管カテーテル検査が必要と判断された患者は、メタボローム解析を再度施行する。特に、代謝産物が病態との関連や薬物的介入との関連が認められた疾患については、対象条件を絞ってこの時期に症例の追加を行い、候補となった代謝産物の病態との相関性を再検証するとともに、バイオマーカーとしての有用性を検証する。心肺血管疾患マウスモデルを用いたメタボローム解析にて候補となった代謝産物についても、対象条件を絞って症例の追加を行い、候補となった代謝産物の病態との相関性を再検証するとともに、バイオマーカーとしての可能性を検証する。 心肺血管疾患を有する患者サンプルを用いたメタボローム解析と平行して、心肺血管疾患マウスモデルを作製し、心肺血管組織や血液サンプルにおけるメタボローム解析も行う。具体的には、心不全モデルとして大動脈縮作モデルや心筋梗塞モデル、肺高血圧モデルとして低酸素暴露モデル、動脈硬化モデルとしてApoE欠損マウスなどを用いる。疾患や病態と関連がありそうな代謝産物が得られた場合、ヒトの血液サンプルでも疾患や病態との関連性について検証を行う。ヒトで候補となった代謝産物については、マウスモデルにおいてバリデーションする。上記にて疾患や病態と相関がありそうな代謝産物を明らかにし、その代謝経路に重要な酵素や関連分子の組織特異的遺伝子欠失マウスを作製するし、候補となった代謝産物の病態生理学的な役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、具体的な研究結果を発表する段階ではなかったため国際学会(欧州心臓学会、米国心臓学会)へは参加しなかったこと、メタボロミクスを目的とした心肺血管疾患患者からの検体採取は70例を超えたもののメタボロミクス解析が約30例までしか完了していないこと、症例数が少ないために代謝産物の同定には至らずに基礎系の研究が開始されていないこと、現状では統計解析の必要がまだないことにより統計解析等のソフトを購入していない等の理由により、物品費(設備備品費、消耗品費共に)及び旅費が予定額を下回り、次年度使用額が生じる結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度以降、予定通りメタボロミクス解析が進むことにより、研究は計画通り進展するものと思われる。それに伴い、当初予定していた物品費(設備備品費、消耗品費共に)は必要となり、国際学会も含めた学会への参加も増加するため旅費も必要となる。そして、最終的な3年間での総支出額は、ほぼ当初の予定通りとなる見込みである。そのため、平成29年度以降は、平成28年度の未使用分の物品費、旅費を追加で使用する予定である。平成29年度は、直接経費のみで物品費50万円、旅費50万円を予定していたが、次年度使用額の66万円を加え、おおよそ物品費80万円、旅費70万円、その他16万円となる計画である。
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