2本のアブレーションカテーテルで心筋を挟み、先端電極間で高周波通電を行うバイポーラー通電法(BIP)は、1本のカテーテルと対極板で通電するユニポーラー通電法(UNIP)および2本カテーテルで心筋を挟んで順次UNIP通電を行うシーケンシャルユニポーラー通電法(Seq-UNIP)に比べて心筋表面に形成される焼灼傷サイズは同等であったが、焼灼傷の深さは有意に大であった。しかし、BIPではUNIP、Seq-UNIPに比べて心筋断裂を生じるスチームポップ現象(Pop)の発生頻度は増加した。通電中の経時的インピーダンス変動を単位時間で微分した指標(微分極小値)は、Popを伴わなかった通電に比べてPopを生じた通電で有意に大であった。低出力・長時間通電BIPは高出力と同等の深部焼灼効果、インピーダンス低下を示し、Popの発生頻度は減少した。またインピーダンス変動の積分値は総焼灼深度と正相関を示した。通電中のインピーダンス変動の詳細な解析は安全かつ効果的なバイポーラー高周波通電に有用であると考えられた。 カテーテル先端電極から生理食塩液を強制的に噴射して電極と心筋の接触面を能動的に冷却するイリゲーションカテーテルを用いた高周波通電では約半数に心筋表面ではなく心筋の内側に初期焼灼傷が観察された。組織学的検索においても一部で表層心筋での横紋の残存が観察された。ブタ心筋拍動切片モデルを用いた高出力・短時間通電実験では、通電直後に消失した心筋表層での興奮が時間経過後に40%で再燃がみられたが、低出力・長時間通電法では再燃が現象する傾向にあった。このため安全かつ効果的な方法であると考えられた。 これらの研究成果はPACE(2017年)、新潟医学会雑誌(2017年)にて公表し、APHRS(2016年10月・韓国)、日本循環器学会総会(2017年3月・金沢、2019年3月・横浜)で報告した。
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