研究課題
心不全再生医療のため使用する皮下脂肪組織由来間質細胞群の中で、心機能改善などの再生効率に優れたエリート幹細胞を同定し、その解析を進めた。特に、CD271陽性細胞では、培養時の分裂増殖能、炎症性サイトカイン抑制能に優れていることが確認できた。さらに、患者背景により、エリート幹細胞群の含有率、発現率が大きく異なっており、その背景に関与している現象が皮下脂肪組織の炎症状態であることを確認した。この皮下脂肪の炎症に影響する患者因子として、糖尿病の発症、増悪に関係のあるインスリン抵抗性であることを明らかとした。インスリン抵抗性の出現により炎症進展型マクロファージが活性化し、これによりエリート幹細胞の発現率が著しく低下する現象も確認された。インスリン抵抗性の強い患者から採取分離された再生細胞群は、培養における増殖能も弱く、炎症抑制効果も非常に乏しいことが判明した。逆に、インスリン抵抗性の顕著でない患者由来の再生細胞では、増殖能、炎症抑制能ともに優れており、再生医療に応用可能な細胞群であることが確認された。マウスを用いた動物実験でも、インスリン抵抗性の弱い患者由来の再生細胞が心機能改善や強力な血管再生能力を有していることが確認された。さらに、炎症抑制因子の候補を20種類までに絞り込むことが出来た。ここまでの研究成果は、国際学会で発表し、再生医療の分野で強い関心を示された。次年度中に、臨床応用への考察を進め、有効な再生医療実現に向けた知見に進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
並行している実施している臨床研究も順調に進んでいる。さらに、ヒトサンプルの解析、動物実験ともに研究開始時の推察に矛盾しない有益な知見を得ることが出来た。今後は、細胞実験、マウスを用いた動物実験の再現性の確認、臨床サンプルのさらに詳細な解析を進め、有効でかつ安全な心不全再生医療実現のための基礎的研究を進めていく予定であり、現時点では予定通りにおおむね順調に進展している。
ヒトサンプル(脂肪由来再生細胞)の解析から、エリート幹細胞と推測していた細胞群の再生能力の高さを確認し、マウス動物実験による有効性まで確認することが出来た。今後は、20種類を超える炎症性サイトカイン抑制因子(液性因子)候補から3種類に選別し、さらに有効性を高める機序を明らかとする。具体的には、今まで実施してきた細胞解析結果、サイトカインプロファイル結果、患者臨床データの多変量解析を進め、一つ一つの液性因子を、細胞実験で検証していく。さらに、これまでの研究結果を国際誌に発表する予定でいる。
研究計画は概ね順調に進んでおり、当初予定していた国際学会での一回目の発表を本年度発表することが出来た。消耗品の購入金額が予定より低くされたことなどより若干の繰越金が発生したが、次年度の計画により正確に使用できると判断している。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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