研究開始より当院にて加療を行った症例の内、さらにDrop outされた症例を除き、AMI79例、CAD群44例、Control群64例にて解析を行い、以下の考察を得た。 ①AMI発症により心筋に重篤な虚血性のダメージが出現した後よりMuse細胞は増加傾向を示し7日目にピークを迎えることがわかった。②Muse細胞はAMI群にて増加し,CAD群ではControl群と有意な差がないことを示した。このことは,Muse細胞はAMIによる虚血ダメージをシグナルとして増加するものであり,冠動脈に75%以上の有意な狭窄病変があるのみではそのシグナルが出ないことを示唆している。③AMI発症後のpeak CK値はその梗塞範囲の広さを反映すると報告されているが,大きな梗塞である程,Muse細胞数は増加することがわかった。大きな梗塞であるほど,左室収縮能の低下が著明であり,リモデリングも進む可能性が高く,Muse細胞の自己修復能力が心機能を改善しリモデリングを抑制するように働くことが示唆される。④S1P濃度とMuse細胞数が正の相関関係を示していたことから,Muse細胞はS1Pのシグナルで増加する可能性がある。⑤慢性期の評価では,左室収縮能が改善する症例や左室リモデリングが抑制される群ではAMI発症急性期において動員されるMuse細胞数が有意に多かった。反対に左室収縮能の悪化や左室リモデリングを認める症例ではMuse細胞の動員が少なかった。このような症例では,内因性のMuse細胞が十分動員できていない可能性があり,Muse細胞の投与によるAMI治療の可能性が示された。
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